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トパーズの日記ー日系アメリカ人強制収容所の子どもたち

 

タイトルは、太平洋戦争勃発を機に強制収容された日系2世のうち、トパーズ収容所内の小学3年生のクラスに通った子どもたちによる絵日記のこと。毎朝子どもたちが自由に話したことを日系人の担任が書きとめ、子どもがそれに絵をつけた。

まだ9歳の子どもたちには自分たちの身に起こったことがよくわからず、凧揚げをしたとかトカゲをつかまえた、友だちのママがやけどをしたなど、身近な日常をつたなくつづっている。しかし、空に上がる凧の向こうには監視塔と有刺鉄線が描かれ、収容所はトカゲやヘビ、カエルしかいないような熱い砂漠にあったのだし、共同のふろ場のシャワーは温度調節ができず熱湯か冷水しか出なかったのだ。絵日記の内容を補足する文章がとても重要なことを教えてくれる。

また、絵日記以外のところでは、アメリカ移民と差別の歴史、第二次世界大戦から日系人強制収容の経緯、収容所を出てなお続いた差別と苦労、戦後1990年にやっと行われた謝罪と賠償までを、非常にコンパクトにまとめて解説し、全体像がわかりやすい。馬小屋を改装した仮収容所やバラックに吹き付ける砂嵐、学校や幼稚園の子どもの様子など、写真資料も理解を助ける。子ども向けにしてはショッキングなのが、強制収容を前に自殺した退役軍人のことや収容所内で起きた銃殺事件について記していること。それほど多くない紙幅でありながら、事実を容赦なく知らせてくれている貴重な本に思えた。  (は)