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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ムーンキング

 

リッキーは常におびえて言葉を話さない。何人もの子どもをひきとって世話をしている背の高い家に引き取られるが、他の子たちの騒がしさが怖く、部屋に行くために暗い階段を上がっていくのも怖い。だが、ここのお母さんはやさしいいし、同じ年位の女の子ロシーンは、とりわけリッキーを気にかけてくれた。少しづつ落ち着いてくるリッキーに対し、ヘレンは何かとつっかかる。9歳くらいなのに家にいて学校にも行かなくてよい、そしておかあさんが気にかけているリッキーが妬ましくてたまらないのだ。ヘレンはおかあさんの実の子だけど、他の子どもたちがどんどん来るのがたまらない。リッキーは物置部屋で、すてきな椅子と虹色のひざ掛けを見つける。ロシーンはリッキーがそこに座ると月の王さま「ムーンキング」に見えると言って彼を喜ばせた。しかし、ヘレンは意地悪が止められない。ソーシャルワーカーの定期訪問を、ここから連れ出すために来たと言われ、リッキーは家から逃げ出してしまう。だが行く当てはない。義父が暴力をふるう事、母は弱く入院してしまったことが物語の中で徐々にわかってくる。なぐられたくない、誰からも見つかりたくないという思いから自分のことをクモの子なんだと空想する。心に傷がある男の子が主人公だが、その周りの人物の中にヘレンというねたみから彼を傷つける女の子を配しているのがちょっとリアル。ヘレンもリッキーも落ち着いた居場所が見つけられますように。