ぼくことツヨシが4年生の時、「マコト」が転校してきた。マコトのお父さんは、子どものころぼくのお父さんと仲が良かったという。髪の毛をチョンマゲにして結んだマコトは運動神経バツグンで「この学校の番長になる」と宣言する。ぼくは、いじめられている下級生を見捨てて逃げようとしたときという最悪のタイミングで出会ってしまった。クラスでも気が強い女子のおツボネさまこと坪根さんはマコトを敵視して無視するが、マコトは全く意にかいさない。それまでおとなしくてのけもの扱いだった高野さんをフォローしながら、堂々とふるまってみんなの中で居場所を作ってしまった。母子家庭のマコトの母親は、具合が悪い祖母のめんどうもみているので、マコトはいつも急いで学校から帰る。だけどそんな事情は決してみんなには話さない。悲しいときはくちぶえを吹けば大丈夫と言い、強く優しい番長としてみんなに慕われるようになっていく。気が付けば、いくじなしだったぼくも少しずつ変わっていった。だが、せっかく仲良しになったのに、祖母の病気の治療に便利な街へと1年後転校してしまった。今、大人になったぼくは、子どものころのノートを見つけ、そこにマコトのことを書き綴った思い出を元にこの本を書いた、という形式で物語を作っている。
これは児童文学ではなく、大人が一般向けに書いたノスタルジー小説。だけど、いかにも健気でイジメを許さないというキャラが大人受けするので、学校の先生が喜びそうな気がした。全体をこれはマコトを探す掲示板にたとえた構成などはうまいが、ちょっと大衆演劇みたいであえてその効果を楽しんでもらうためにやっている気もするが、それを楽しむのはやはり大人の気がしてしまった。