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ふたりのえびす(2023課題図書小学校高学年)

 

著者は青森在住で地元図書館に勤務の傍らで執筆を行っているとのこと。小学校5年の太一は、転校してからおちゃらけキャラを作って、クラスの中で居場所を確保している。目立つことはしたくないのに、郷土芸能「えんぶり」でえびす舞をやることになってしまった。そこに立候補したのは王子こと、転校したてのイケメン大路優希。はっきり言って、えびす舞は、滑稽さをウリにした舞で、イケメンには似合わない。周りの女子は大反対だが、王子は意にかいさない。さらに、なんと運動神経は悪くないのに、王子にはリズム感が欠けていて、踊りがヘタクソ。「どうせ知られるなた早い方がいいと思って」と、平然とヘタな踊りを踊る王子に、太一は愕然としてしまうが、共に練習を続ける中で、キャラの裏にあった本心をのぞかれてしまった。”キャラ”づくりは、よく言われることで、子どもたちの興味を引くかも。ただ、太一が前の学校で友だちがなかったというのはどうだろう? なんか、こういう転校モノって、その前は孤立していて、新しい場所で友人を見つけるパターンが多いけど、転校しないと見つからないのか?などどふと思った。また、太一の潔癖症も、どうしても受け付けないのか(そのわりには耐えて受け入れることがある)がちょっとわからなかった。”キャラ”というけど、結局思春期の自意識過剰? それは否定的な意味ではなく、自分をとらえ直して大人になるための一歩。常に、本音だけだったら、かえってヤバイしね。郷土芸能と友情というのは、最近、わりと書かれる題材の気がする。人口減少で、担い手が小中学生になったせいかも・・・、ともおもいました。