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牧野富太郎 日本植物学の父(2021年課題図書 中学生)

 

自然科学系の児童書の企画・編集・執筆を行っているという著者による伝記。牧野富太郎といえば植物図鑑の有名人だが、きちんとした教育を受けていない独学の研究者であったことを初めてこの本で知った。豊かな商家に生まれ、両親と祖父を早く亡くすが、祖母にかわいがられて好きな植物学に夢中になり、ついに故郷の土佐出て東京で植物学の研究に打ち込むことになる。当初は彼を快く受け入れた東大も、自分で本まで出すようになると彼を排除する動きが出る。さらに祖母の死により実家からの仕送りも消えて窮乏するが、追いつめられると救いの手が伸びて、研究の場や資金援助が与えられ、94歳まで生きて植物学の基礎をまとめる。妻の壽衛(すえ)の献身にも支えられて、研究の生涯をまっとうするのだが、牧野の個性が、植物が好きで好きでしょうがなくて、とてもユーモアにあふれていたことが語られる。これは、お坊ちゃま育ちで、苦労せずにかわいがって育てられたせいではないかしら? 偉大な業績をあげたけれども、学歴はなく、学歴に興味もなく、結局のところ好きなこにはまったオタクとしての牧野富太郎といと感想文は書きやすいのでは? 東大出入り禁止事件とか、裏でドロドロがあったかもとも思いますが、そこはあまり踏み込んでないのは児童書ゆえかも、でした。