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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

湖の国

 

ミトは両親も兄姉も優秀な家族の中で、一人落ちこぼれだった。なんとか入ったお嬢様高校なじめず、中退して引きこもる。だが、偶然夜中のコンビニで、スリッパのおばあさんに声をかけたのをきっかけに、そのおばあさんのいる介護施設でアルバイトをさせてもらうようになった。徐々に施設になじんだのに、バイトに気づいた家族は、施設の雑用係などはやめてアメリカ留学に行け、と言う。どうしていいかわからないまま、ミトは認知症気味の仲良しのおばあちゃんヨシノさんの湖のそばの家に行ってみようかと思う。辺鄙な村の湖近くにに、ヨシノさんの家はあった。一晩だけ、と思っていたのに、その夜、湖から不思議な船があがって来て、一人の人間が家に入ってきた。それはなんとヨシノおばあちゃんにそっくり、だが、なにか変! 不安だが、ヨシノの外見と危険がなさそうなようすに、帰りたくないミトは、ヨシノと共に居着く。ヨシノは、何かを探していた。どうも30年前、強盗があったが、犯人の一人が消えたという不思議な事件と関係しているらしい。いったい何があったのか? このヨシノの姿の人物は、何をしようとしているのか? その正体は? ちょっと謎ときのような興味で引き付けて読ませていく。居場所のないミトの不安感が印象に残る。不安を抱えた子がひきつけられそうな作品。