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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

タフィー

 

アリソンは家から、そして父さんから逃げた! すっと我慢していた。父さんが怒るのは、自分が悪いから、父さんは自分を愛してくれていると信じていたから。母さんは、自分が生まれた時に死んでしまった。居つかない父さんのガールフレンド。だけどケリーアンは続いた。いつもアリソンを助けてくれたけど、ついに父さんの暴力に耐え切れなくなって一緒に逃げようと言ってくれた。でも行けなかった。娘だから。ケリーアンが消えてから、いっそう父さんは荒れ、ついに限界がきてしまう。ケリーアンが教えてくれた住所は転居した後で、携帯も盗まれる。行く場所がなくて潜り込んだ納屋の母屋にマーラがいた。「タフィー」とマーラはアリソンを呼んだ。すぐに混乱するマーラ、家に招いてくれたのに、すぐにアリソンの存在を忘れる。定期的にくるのはケースワーカーだけ。マーラが「タフィーがいる」といっても取り合わない。いる気配を残さなければ大丈夫。居場所がないアリソンとマーラの奇妙な同居生活が始まる。すぐに忘れるマーラ。少女時代に戻るマーラ。むくれる、踊る、怯える、日々違う顔を見せるマーラを理解しようとするアリソンの過去が少しづつ明かされていく。知り合った地元の女の子から成り行きで宿題のバイトを請け負うことになる。アリソンは、成績は良かったから。マーラのお金を使わずに済む。だが、マーラの混乱は進む。物語詩の形式で描かれた二人の行く末にハラハラしながら、ひっぱられるように一気読みをしてしまう。認知症のマーラの中にある青春時代のきらめきを見ていると、これから老いる身としてはとても励みになる! そして、この出会いがあったから進めるようになったアリソン。それにしても、こういう父親はいそう。この父親も一種の犠牲者であることも確か(だからと言ってやっていることは許されないけど)。自分をコントロールできなくなっていく男性の救いって、ということも考えてしまいました。