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てつがくのライオン―工藤直子少年詩集

 

「のはらうた」シリーズで、生き物たちの思いを代弁して楽しませる工藤直子さん。

本詩集でも、ねこやくま、ごまめや、そらまめ、ピーマンなどの心を描く「いきものたち」、人間の悲しみや寂しさ、痛み、たいくつ、ウキウキを描く「たくさんの心」などに章立て、空、雲、海、太陽、地球にも思いをはせています。

佐野洋子の挿し絵は、それらの哀愁と、強い自我の両方を表現して見せています。「出合いのものがたり」の章は散文詩で、長新太の絵で『てつがくのライオン』(復刊ドットコム)、また、「夕陽のなかを走るライオン」は中谷千代子の絵で『らいおんはしった』(福音館書店)という絵本になっています。

最後「遠眼鏡でのぞいてごらん」の詩は、「真っ白な来年に/さて なにを描こうか」と結ばれます。来る年が「まっ白」に思えたら希望があるなあと思います。 (は)