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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

吹雪の中の列車

 

原書は1933年、ユーゴスラヴィア時代のクロアチアで描かれた作品。そのため、時代がかった感じもする。とりわけ、先生が子ども同盟を作って、子どもたちに自治を体験させ理想の社会を作ることにつなげようとする姿勢は、ちょっと形式的過ぎる気もする。とはいっても、実際の子どもたちは、親が金持ちかどうかで格差があり、お菓子をばらまくペーロの買収工作ありと、目先のことで動いたりと一筋縄ではいかない。主人公リューバンは、貧しいけれど、公平でまじめな男の子で、ちょっとできすぎ! 金にものを言わせる悪い子ペーロVS貧しいけれど優秀なリューバンの図式は、単純すぎるともいえる。ただ、こうしたわかりやすさに私たちが心惹かれるのは事実。吹雪で停車してしまった列車の中で、小学校4年生の子どもたちが、自分達だけでもなんとか食べ物や洋服を融通し合い、果ては除雪作業への協力まで成し遂げるというのは、なかなかときめく。現代の格差社会では、これほど目に見えないけど、むしろ子どもたちへの制限はさらに強くかかっているかも、そういう中でも、どこかで理想を忘れないでいたいですよね。