児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ロッタの夢 オルコット一家に出会った少女

 

若草物語』冒頭、4人姉妹は貧しい家族にクリスマスのプレゼントを届ける。これは、いわばそれを受け取った少女の側からの物語だ。創作だが、当時のオルコット家のようすを忠実に書いているとのこと。

1984年11月ドイツからボストンに到着した一家は、あてにして友人にあえず、馬の世話では優秀だった父は、英語が話せず都会で仕事が見つけられなかった。母親はまもなく出産を控えている。12歳の長女のロッタは英語の勉強をして父の通訳をする中で、父が実はドイツ語も読み書きができないのに気づいてしまった。牧師の娘である母は、子どもたちに勉強をさせることを大切に考えているが、女の子の通学を断られてしまう。父はやっと肉屋に就職するも、なれない刃物で腕を切って失業、姿を消してしまう。母親の出産は、いつはじまってもおかしくない。気が強いが勉強嫌いの兄カールは毎日食べ物を持ってきてくれたが、それは市場で盗んだもので牢に入れられてしまった。どうにもならなくなったロッタは、助けてくれるならこの人、と教えられオルコット家を訪ねる。気取った末っ子メイに見下されて反発するが、元気なルーイに部屋に引き入れられ、やさしく実際的なオルコット夫人のおかげでカールは釈放され、食べ物も差し入れてもらえるようになった。本であふれる知的なオルコット家はロッタのあこがれそのもの。だが、徐々にこの家では、みんなが懸命に仕事をしてお金を稼いでいることに気が付く。裕福ではないのに助けてくれていたのだ! ロッタの父親はどこに消えたのか? 母親は無事に出産できるのか? 不安な毎日の中でもロッタは着実に成長している。最後、当てにしていたオルコット家への下宿がかなわなくなっても、やっと13歳になったばかりのロッタが一人で住み込み先をさがしにいくラストは圧巻。昔の子どもは、早く大人にならなければならなかったのね。それにしても、時代が変わっても移民問題・貧困問題としての示唆も感じ、十分に今読む価値がある。