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フランバーズ屋敷の人びと3 めぐりくる夏

 

冒頭でいきなりのウィルの戦死、さらにマークも戦地で行方不明。21歳となって財産を相続したクリスチナは、フランバーズ屋敷に帰ってくる。荒れ果てた屋敷にいるのは老いた召使のみ。戦争で雇える人間も見つからない。やっとのことで少年2人とドイツ人捕虜1人を確保して農業をはじめようとするが、素人のクリスチナには困難の連続。おまけにウィルの忘れ形見が宿っていることに気づく。フランバーズ屋敷再生のため、マークの私生児トーマスを引き取り、生まれたイザベラと共に前を向こうとする中で、戦地で肺に重傷を負って帰国したディックと再会。ウィルに向けたのとは違う穏やかな愛情が二人の間に芽生え、ディックのおかげで農地経営もなんとか軌道にのっていく。だが、まさかのマークが生還。屋敷の所有権は彼のものだ。とはいえ、屋敷は多額の負債を抱えていた。クリスチナは屋敷を買い取り、マークは軍人の仕事を続けつつ、華やかで裕福なクリスチーナの友人ドロシーと結ばれ、ディックとクリスチナが結婚ということで、絵にかいたようなめでたしめでたしに落ち着く。だが、この本が一味違うのは、登場人物一人一人の個性だろう。父親似で気性が激しく、屋敷を失って農地の小屋で暮らすかもしれないときいて、小屋に放火するようなトーマスの激情。時代がかわったことが受け入れられない召使たちの戸惑い。そして、影の主役はなんといってもフランバーズ屋敷。屋敷再生へのクリスチナの執念は果たして・・・ですね。