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中学生の満州敗戦日記

 

設計の仕事をしたいた父が、ハルピン工大の教授として招かれ、1937年一家で満州に渡った。ぼくは、中学3年で日本の敗戦を迎える。もっとも過酷な開拓村の住民に比べれば、まだマシではあったが、ソ連軍が入って来て家も接収され、なんとか食べる手段を確保するために仕事をしながら、日本に帰れる日を待ちわびる。やっと帰国の目途がつくが、それは何日かかるかも見通せない旅となる。敗戦で突然変わったさまざまな事柄、思いがけない商才を発揮する元同級生。学校で学びたいという渇望。家族そろって帰国できた著者は幸運であったというべきだろう。だが、多くの農民を敗戦がわかっていた1945年4月まで送り込んだ日本。住民を置き去りにして、真っ先に逃げた日本軍。残虐な七三一部隊の衝撃など、日本の戦争の愚かさがよくわかる。沖縄戦でもそうだったが、日本軍は民衆を守っていない。今後、日本が戦争ができる国になった時、軍は私たちを守ってくれるのだろうか?