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雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 ~立春に卵が立つ?!~

 

石川県生まれ、雪や氷研究で名を遺した物理学者、中谷宇吉郎のエッセイ21編。

雪の結晶の表現は、さすが美しい。「枝の端々までが手の切れそうな輪廓」「その中にちりばめられた変化無限の花模様」。

また、「立春の時に卵が立つ」という世界的ニュースに対する科学者たちの反証がどうも歯切れがよくないと、自身で根気よく試してみた結果、卵はいつでも「立つものなのである」と証明。「世界中で卵が立たなかったのは~立たないと思っていたから」という指摘は、あっけないようで深いです。

我が子との会話が愉快なのは「イグアノドンの唄」。

そして、受験生を励ます「私の履歴書」。落第は人生において損とは限らない。「回り道」でも「何度変転してもかまわない」「その時々に大まじめでさえあれば」と言っています。

師匠である寺田寅彦の文章を編んだ『科学と科学者のはなし』よりも読みやすく、中学生にもすすめられます。 (は)