児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

本好きの下剋上 第二部神殿の巫女見習いⅡ

 

 

 ついに本づくりに着手したマイン。でもインクを作るところからスタート。苦心さんたん、厚紙を型紙として、絵本の試作品完成にこぎつける。そんな中、騎士団の要請でトロンベ討伐に動向。ところが護衛につけられた貴族騎士シキコーザは、平民マインへの反感に燃えて刃物を抜いてかかってきた! なんとか無事にすんだものの、マインは貴族がどんなに平民を差別しているかという現実に愕然とさせられて前途多難を予感!

 

本好きの下剋上 第二部神殿の巫女見習いⅠ

 

 神殿での通いの青色巫女見習い生活が始まったマイン。側仕えにつけられたのは、マインに敵意を持つ神殿長からのスパイで夢は愛人というデリラ。孤児院の問題児ギル、そしてマインを認めてサポートしてくれる神官長の右腕フラン。はっきり言ってフラン以外は使えない! だが、野生児ギルは、初めて褒められ体験をして、素直に喜んでなつき、デリラもはっきり本音をいって意外と素直。ところが、マインの居室は孤児院だが、そこがあまりにも劣悪環境なのでショックを受ける。自分の善意では限界があることに悩むマインだが、ルッツから下町の子みたいに、自力でやれるだけやらせたらどうかとアドバイスされる。かくしてマインは孤児院長に就任。子どもたちは、できる範囲で仕事をしたり森へ採集に行き生活が改善されていく。そして学習も開始した。ベンノさんのためのイタリアレストラン準備のための活動も開始。せっかく神殿に行ったのに、本を読む時間が十分に取れずに悶々としているマインです。

本好きの下剋上 第一部兵士の娘Ⅲ

 

新しい友人フリーダと出会い、一緒にお菓子作りをしたことで、フリーダは嬉々としてお菓子事業を開始し、ベンノには渋い顔をされるといういつものパターンに陥っているマイン。見習いを始めたルッツが家族の理解を得られなくて悩んでいるのが心配だ。そして、いよいよ洗礼式。おねえちゃんのトゥーリの服をお直しするのだが、サイズが違う大きな服をヒダヒダドレスにしたところ一挙に豪華に変身。そして初めて行った神殿で、祈りのポーズがグリコポーズなのが笑いのツボに入り、笑いを抑えようとして倒れ、衣装が豪華のため、奥の控室へ、そして神殿の図書室を発見して興奮!「神殿に入りたい」と絶叫してしまう。だが、両親は猛反対。なんと神殿は孤児が収容されて、下働きに酷使されているところなのだ。だが、ここの巫女にはランクが二つあった。通常は貴族がなる青色巫女、身食いとは制御できない魔力を持っ存在で、その魔力は神殿では必要とされていたものだった。そしてここでならマインは生き延びることができる。新たな未来がみえてきたマインでした。 

本好きの下剋上 第一部兵士の娘Ⅱ

 

 本格的に紙の製作を開始することになったマイン。父親の部下オットーに紹介された商人ベンノと堂々と交渉する姿は、幼馴染のルッツに疑惑をよびおこし、マインはついにルッツにだけは本当のことを打ち明けるが、ルッツがそのマインを丸ごと受け入れてくれたことで二人の結びつきは、分かちがたいものとなる。仕事のために見習い仮登録をする中でギルド長と出会い、ギルド長の孫娘で同年齢だが才気きらめくフリーダと出会う。そして自分の病が「身食い」というものであり、治療のためには大金が必要なことを知る! そして、この巻のラストは発作、これからどうなるマイン? というところで、ルッツとの関係の中で、本人も麗乃時代には必要なかった(本さえあればけっこう!)人間関係を結ぶ重要さに目覚めて成長している主人公でした。

本好きの下剋上 第一部兵士の娘Ⅰ

 

 本大好きで常に本を読んでいる麗乃は、無事に大学図書館への就職内定もでて、一生本に囲まれて暮らせるとホクホクしていた。ところがそんな時、自宅の書庫でで地震に襲われ、命の危険を感じるが気づいたら幼い子どもの体の中に入っていた。まるで中世のような世界で、自分は虚弱なマインという5歳の女の子となっている。その世界には、なんと本はない! いやないことはないが一部貴族の貴重品で庶民の手には届かない。マインは、なんとか本を手に入れるべく動き出す。衛生的な暮らしでなんとか虚弱さを直そうとしつつ、大学卒の学力を活かし、帳簿チェックの仕事の手伝いと引き換えに父の同僚城門の警備兵オットーよりこの世界の文字を習い始める。かたや、パピルス紙や粘土板、竹簡などの製作を試みるが、ことごとく失敗。幼く虚弱な体もうらめしい、だが、オットーより他力を使うことを示唆されて、幼馴染のルッツの力を借りて、チャレンジを決意する。というのがここまで。サバイバルものとしてなかなか楽しい展開だが、かごを編んだりしてるなら、そこからもう一歩で紙もどきに展開できないか? と思ったりする。本を好きな思いも、ここまで執着するならもうちょっと描いてほしいが、ひょっとしてこれは、本しか目に入らない女の子が、本のない世界で、現実社会に順応する話か? と思い始めた。

ぐるぐるの図書室

 

ぐるぐるの図書室 (文学の扉)

ぐるぐるの図書室 (文学の扉)

 

人気のある著者による連作短編。不思議な貼り紙に誘われて学校の図書室に行き、もう一つの世界を体験する。『時のラビリンス』工藤純子は、渡せなかったプレゼントを渡そうとして何回も同じ日にチャレンジすることになる女の子の物語。こういう話は、ラストが肝心だけどいい感じで決着。『妖怪食堂は大繁盛』廣嶋玲子は、明るいドタバタ劇。『秘境ループ』濱野京子は好きな女の子と秘境の世界に閉じ込められ、戻ってくるためにはすべてを(彼女への思いも)忘れなければならなくなる男の子がちょっと切ない! 『九月のサルは夢をみた』菅野雪虫は、斜に構えた主人公がちょっと素直に、『やり残しは本の中に』は、いい加減に本を読んだことが原因で、メロスみたいな世界に入っちゃった! という話。いずれも手堅くまとめてある。巻末に、作者たちの子どものころの読書体験があるのは、本好きな子にはうれしいかも。 

この本をかくして

 

この本をかくして

この本をかくして

 

 抽象的な感じが強い。戦争が起こり、図書館も破壊される。だが、父がいつも読んでいた本は助かった。街は占領され、ピーターと父さんは家をおいだされるが、父さんは残った大切な本を鉄の箱に入れて持っていく、道中で父さんが死に、本はピーターに託され、ピーターは自分の荷物を捨てても本を運ぶが、最後の山越えにはもっていけず埋める。他国で成長したピーターは、大人になって故国に帰り、無事に本を掘り出し図書館にもっていく。というわけだけど、観念的すぎる気がする。埋めるんなら早々に埋めても良かったのでは? と、つっこみたくなってしまうし、その本は「ぼくらにつながるむかしのことがかいてある本」と表現されているのみだが複本はないような本なのか? とも思ってしまった。感情に訴える絵本ではあるが、もっと多様な形で本を守るほうほうが個人的には趣味。