児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

きょうりゅうくんとさんぽ

 

きょうりゅうくんとさんぽ (はじめてひとりでよむ本)

きょうりゅうくんとさんぽ (はじめてひとりでよむ本)

 

 ダニーは恐竜が大好きだ。博物館で恐竜を見ながら、いっしょに遊びたいと考えていると、恐竜も「僕もいっしょに遊びたかった」という。二人はゆかいな散歩に出かける。道行く人はもちろんびっくり。友達のところに連れていくと、もちろん友達も大喜び。ぞんぶんに恐竜とあそぶ楽しさが素直に出ていて、とても楽しい絵本。

ファイヤーガール

 

ファイヤーガール

ファイヤーガール

 

 転校して来た少女は、重度の全身やけどで直視できないような姿だった。人がいいけれど気の弱いトムは、やけどの少女ジェシカがいる事で重くなった教室の空気に憂鬱になりつつ、だれも口をきかない彼女が気になる。たまたま宿題を届けることになった事をきっかけに、トムは、彼女と始めて言葉をかわし、かつて美しかった少女がそこにいることに気付く。だが、やけどの原因をめぐって、無責任な噂が流れ、ジェシカは孤立する。結局わずか3週間余りで治療のため転校していく彼女。なにもできなかった後悔が、トムをうちのめすが、ジェシカを通じてクラスの人間関係を見直していく。シビアな状況にオースドックスな展開ではあるが、良心的に書いてある。ジェシカのことばをもう少しきいてみたかったかな。

だれも知らない小さな国

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 追悼 佐藤さとる先生😢

再読したが、初読の時とかわらない清冽な印象を受けた。戦争をはさんで、主人公の失われた子ども時代の再発見をするようなコロボックルとの出会い。最初は言い伝えとして聞き、ひょっとしてと感じ、一度はその姿を見たはずなのに、忘れていたものとの出会い。その普遍性がこの物語の魅力だと思う。そこに、赤い運動靴のおちびさんとの出会いが重なる。ファンタジーは、いかに「リアル」に感じさせるかがポイントだが、子ども時代にこの本に出会うことで、コロボックルを心に抱いて成長できる子は幸せ。自分自身の誰にも侵されることのない「矢じるしの先っぽの小国」世界を手に入れたい。

世界一おもしろい数の本

 

世界一おもしろい数の本

世界一おもしろい数の本

 

数学の歴史をたどりながら、数を数えるということ、計算、そしてそれがどのように役立っていくかを、カラフルなイラストを交えて紹介している。よみやすくはあるが、オーソドックスな内容で「世界一おもしろい」は、さすがに言い過ぎ? 数学に苦手感を持つ文系の人が読むにはよさそう。 

ぼくとヨシュと水色の空

 

ぼくとヨシュと水色の空

ぼくとヨシュと水色の空

 

 ヤンは生まれつき心臓が悪い、すでに何度か手術もしているが、体の成長に合わせて再手術が必要だ。子どものころからの友人ヨシュアは、体が大きくてたのもしい味方だ。だが、興奮すると言葉がスムーズにでなくなったり、怒りを抑えられなくなる様子をみせることもある。ヨシュアはおかあさんと二人でくらしているけれど、お母さんは時々いなくなってしまうようなのも心配だ。ヤンの二人の元気なお姉さんたち、嫌がらせをする不良の同級生、トラブルはないわけじゃないけど、ヤンだって自分で解決したい。街には少し気味の悪い「ねずみばあさん」と呼ばれている年寄りがいる。ある日、ねずみばあさんが刺され、ヨシュアが目撃される。だけど、犯人は、同級生の不良たちだ。でも、おりあしくお母さんが不在でヨシュアは逃げ歩き、ヤンは心臓手術のため動けない。体は弱いが、柔軟な心を持っているヤンが、自然な感じで描かれている。また、ただの気味悪いおばあさんと思っていた「ねずみばあさん」に、子どもが目の前でしんでしまったという過去があったことを知る展開もいい。ただ、ヨシュアとの友情の過去がちょっとわかりにくいのと、最後の解決がつごうよすぎ?と気になる。

あんずの木の下で 体の不自由な子どもたちの太平洋戦争

 

 太平洋戦争下、通常でも差別の対象だった障がい児は、過酷な状況にあった。疎開先もみつからない、先生たちは、他校の先生たちより「こんな子どもの面倒をみるひまがあれば軍隊に行け」と言われる。そうした極限の中で、子どもたちを守り抜いた貴重な光明学園の記録。だが、残念ながらなんとも、書き方がお説教くさい。疎開先を確保したり、専用列車を手配した松本校長先生は、単なるやさいしい先生のはずがない。当時の子そもたちも怖かったとも証言している。怖さやしたたかさがなければ、切り抜けられたはずがないのに、その雰囲気がほとんど伝わってこない。また受け入れた上山田温泉も、当然差別的な意識があったはずなのに、どう受け入れていったかがよくわからない。年表を話し言葉風の文章にしているようだ。また、いじめはいけないと力説しているが、とても観念的。どうやって、自分の中のいじわるな気持ちを変えていくか、変えていけるかがみえてこないと、スローガンだけで実態が伴わないものになってしまいそう。ぜひ、もっとちゃんとした本になってほしい。

ローラのすてきな耳

 

ローラのすてきな耳

ローラのすてきな耳

 

 ローラは耳が聞こえない、そのせいで友だちの声がよく聞こえなくて、ばかにされたり仲間に入れてもらえないことがよくある。道路でも、車の音が聞こえなくて怖い思いをすることも多い。だけど、補聴器を手に入れてから、やっとそしたことから解放された。今では友だちの声が聞こえるから一緒に遊べる。静かでいたいときは補聴器のスイッチをいれればいい。みんながうらやましがるすてきな耳だ。という内容だが、補聴器がなかったら差別していいのか?と疑問が残ってしまう。