児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

りゅうおうさまのたからもの

 

りゅうおうさまのたからもの (世界傑作絵本シリーズ)

りゅうおうさまのたからもの (世界傑作絵本シリーズ)

 

 モンゴル出身の画家と作者による、色彩鮮やかな絵本。兄はなまけものだが、弟は働き者の兄弟がいた。ある日、弟は鳥に食べられそうになっていた魚を助けると、魚は竜王の娘だった。竜王からお礼に金色の「水の箱」をもらう。決して開けてはいけないといわれるが、その箱を枕に眠ると大地には水が豊かに流れる。だが、欲張りな兄は、箱の中に宝物があると考えて開けてしまうと、大水ですべてが流され、後には水がなくなってしまった。弟は、竜王に許してもらいに出かけ、途中でカエルとヘビを助ける。竜王から三つの謎を出されるが、弟は、カエルたちに助けられて、もう一度宝をとりもどし、竜王の娘と幸せに暮らす。定型的なむかしばなしだが、素直に楽しめてよい。

スマート キーラン・ウッズの事件簿

 

スマート: キーラン・ウッズの事件簿

スマート: キーラン・ウッズの事件簿

 

 主人公キーランは、はっきりかいていないが、たぶんアスペルガー症候群の男の子。特別支援学級で指導を受けて、まじめに社会の中で生きていこうとしている。だが、彼と母に暴力を振るう義父と、やはり乱暴な義兄がいる家庭で、辛い思いをすることも多い。ある日、知っていたホームレスのコリンさんの死体をみつける。そのそばでは、コリンさんと親しかったホームレスのジーンさんが悲嘆にくれていた。キーランは殺人事件だと思うが、警察は酔ったホームレスが川に落ちただけだと相手にしてくれない。彼が得意なのは、絵を描くこと。ジーンさんがコリンさんと言い争っていたという人のスケッチや、現場のスケッチを描き、自分なりに捜査を続ける。そして、かつては交流があったのに、母親が義父トニーと暮らし始めたことで交流が途絶えてしまった祖母にも会いに行こうとする。自分なりに、少しづつ考えながら前に進む姿は、とても魅力的。最近、こうした訓練で社会性を身に着けたり、まわりの世界を理解しようとする主人公が活躍する作品が増えているが、ひょっとすると、これは、現実に社会性がなくなってきた読者にその方が納得しやすいから? もしくは、そうしたひたむきさはアスペルガーでなければ表現できないから? 物語は、事件の解決と暴力を振るう義父が薬物売買で逮捕されることでハッピーエンドを迎える。ふと、ここで気付く。いわゆる「イワンの馬鹿」のような昔話の主人公の愚かさと素朴さが一体となったキャラが、現代のアスペルガー症候群の主人公なのかも。

バターシー城の悪者たち

 

バターシー城の悪者たち

バターシー城の悪者たち

 

前作で画家の道を目指したいと決心したサイモンが、今作の主人公。ところがロンドンについたところ、頼りにしていた画家のフィールド先生は行方不明になっていた。先生の下宿だったはずの場所に住み着き、画学校に通い、なぞ解きをはじめる。下宿のはみだしっこダイドーは、汚れてずるがしこいが、誰からもかまってもらえない境遇にサイモンは同情を寄せる。偶然出会った幼馴染のソフィーは、バターシー侯爵家に仕えて、幸せになっていた。サイモンも侯爵に気にいられるが、侯爵の身の回りで、次々に怪しい事件が起こる。孤児サイモンとソフィーの出生の秘密と、王室転覆事件が錯綜する。気球での脱出や、なぜかいつでも危機を救うタペストリーなどクスリと笑わせるユーモアもたっぷりで楽しませてくれる。そして、以降ダイドーはパワーを増していきます。 

ウィロビー・チェースのオオカミ

 

ウィロビー・チェースのオオカミ

ウィロビー・チェースのオオカミ

 

 大金持ちのウィロビー卿の一人娘ボニーと、そこにひきとられてきたいとこのシルビア。勝ち気だけどまっすぐな気性のボニーと、おとなしいけれど思いやりがあるシルビアは、すぐに仲良くなった、だが、ボニーの母の転地療養のために両親は旅行に出発。後を託された遠縁の親戚だという怪しい家庭教師は、両親がいなくなったとたん態度を一変させる。両親が乗った船の沈没の報が届き、二人は孤児院へと追い出され、莫大な財産はのっとられてしまう! 近くに住む自立した少年羊飼いのサイモンの助けを借りて、二人はシルビアの大叔母さんの助けを借りるべくロンドンに向かう。オオカミが群れなす架空のイギリス史を背景に、小公女とジェーン・エアを活劇にしたようなおもしろさ。読書力のある小学校高学年の女の子には、特に好評。

きみが世界を変えるなら 言葉を武器に変えて

 

言葉を武器に変えて (きみが世界を変えるなら)
 

「言葉を武器に変えて」「世界を改革した子ども」「「わたしの物語」を生きる」の3冊が同時発売だが、これが一番貸し出されていたので読んでみた。困ったときに、きちんと言葉にして伝えようという内容を、「○○さんの場合」など、それがうまくいかなかった人の事例で説明していく。特に奇をてらっていないので、わかりやすいかと思うが、実際にどうするかの方法を、もう一歩書いてもらってもよかった気がする。理解はできるが、実践はできるだろうか? 読んだ中学生にきいてみたい。 

イースター島

 

 イースターにちなんで(?)この本を。イースター島の写真絵本。有名なモアイ像だけではなく、島の自然や祭りの様子なども映しだす。島民たちが美男美女ぞろいでびっくりです。イースター島の自然破壊が、ナンヨウネズミであったという新説の紹介もあり、島民を尊敬する気持ちがつたわってくる。

よんでみよう

 

よんでみよう

よんでみよう

 

「読んで」「呼んで」どっち? とわかりにくいタイトル。中身も後姿で、呼んで振り向くパターン。ただ、動物に名前がついているが、そのまま「うさぎさんだ」のほうがよかったと思う。