児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ふなのりのやん

 

ふなのりのやん (ブルーナの絵本)

ふなのりのやん (ブルーナの絵本)

 

 やんが航海の果てに島にたどり着き、エスキモーに出会い、家を見せてもらって帰るおはなし。淡々と進み、大人にはあっけないけど、幼児にも理解しやすい。特別すごい絵本ではないけど、ブルーナさんが亡くなり、さみしいですね。

ヒルダさんと3びきのこざる

 

ヒルダさんと 3びきのこざる (児童書)

ヒルダさんと 3びきのこざる (児童書)

  • 作者: クェンティンブレイク,エマ・チチェスタークラーク,Quentin Blake,Emma Chichester Clark,むらおかみえ
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/05/17
  • メディア: 大型本
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 ヒルダさんは、ティム、サム、ルルの3匹のこざるを飼っています。ところが、この3匹、留守番をさせると家中をメチャメチャにしてケロリとしています。ヒルダさんの我慢ももう限界。こんどしたらただではすまない、と注意して家に帰ったら、家の中はきちんとしていましたが子ザルたちがいません! 必死で探すと戸棚の中に。その夜、寝ようとしたらベッドの中にいたずらが・・・というオチがユーモラス。あるあるだけど、奔放なサルたちのいたずらが楽しい。

ふつうじゃない生き物の飼い方

 

その道のプロに聞く 生きものの飼いかた

その道のプロに聞く 生きものの飼いかた

 

「その道のプロに聞く」とあるが、生きものカメラマンによるちょっとユーモラスな飼育本。一つの生き物につき見開きなので、これで実際に飼えるかというと微妙だが、同時に飼い方のセッティングや逃げないための注意などはリアル。また伊勢海老だのアサリだのを食べる前に飼うノウハウなどの意外性があり面白い。高学年以上の、生きもの好きの子が、見て楽しむ感じの本。 

むしのかお

 

むしのかお (ふしぎいっぱい写真絵本)

むしのかお (ふしぎいっぱい写真絵本)

 

虫の顔の正面アップ。ことばは、「こんにちは」「やあ」など、よみきかせにも使えそうだが、その分、知識の本としてはやや軽い。幼虫と成虫の顔の変化の説明などはおもしろいので、もう少しこうした顔の謎、みたいな部分を深めてもよいように思った。 

ダーウィンと旅して

 

ダーウィンと旅して

ダーウィンと旅して

 

 1900年を迎え、まもなく13歳になるキャルパーニア。大好きなおじいちゃんとの研究は続く。気圧計の作り方を教えてもらい観測を始めると、ある日異常な値が! おまけに内陸なのに海鳥が飛んできた。おじいちゃんは大嵐を予感して海辺の街に警告を発し、親戚に電話をかけるが、警告は活かされずに何十年に一度の大嵐がやってきて街は浸水し、キャルパーニアの叔父一家の家も流されてしまった。幸い、家族は全員無事だったが、いとこのアギーが、家の再建まで引っ越してくる。もうすぐ18歳で、ふつうの女性のアギーだが、気持ちを変えるために仕事(学校で小さい子を教える)を勧められると、良家の子女なのに賃金を要求し、その金額まで交渉することに感銘を受ける。「家が流された家族の助けのため」の言葉に、最初驚愕したまわりも納得した。さて、今作の重要な相棒は弟のトラヴィス。生き物が大好きで、つい野生動物を「拾って」きてしまう。とろけるような純な笑顔に、まわりがついつい認めてしまい、キャルパーニアも世話をしてしまう。嵐のせいで移住してきた獣医のウォーカー医師とも出会う。動物付きのトラヴィスは、獣医師になりたいというが血を見ると気分が悪くなる。他方キャルパーニアは、おじいちゃんに指導され、ミミズの解剖から着々と進めていく。女性には学問の道が閉ざされていることに不満なキャルパーニア。だが、アニーの行動から自分でお金を稼ぐという発想、さらにタイプの技術習得をしてウォーカー医師の助手としての実力を着々と進めていく。アニーが稼いだ目的は駆け落ちのためと判明! トラヴィスは、コヨーテと犬の間に生まれ、捨てられた犬を助けることで、ついに満足できるペットを手に入れる。道は険しそうだが、この勝気なキャルパーニアがこの後どうなるかはとても気になる。なお、タイトルの旅は、ダーウィンのビーグル号航海記に寄せた本の世界の旅です。

ダーウィンと出会った夏

 

ダーウィンと出会った夏

ダーウィンと出会った夏

 

 キャルバーニアは7人兄弟の真ん中で、ただ一人の女の子。好奇心旺盛な少女はもらったノートを観察記録に使い、実験を続ける祖父に接近する。事業を成功させた後に引退、今は実験と観察に明け暮れる祖父は、キャルバーニアのあこがれ『種の起源』を貸してくれ、科学の基礎を教えてくれた。もっと学びたい少女の前に、主婦としての道が立ちはだかる。祖父と二人で見つけた新種の喜び、母の期待に添えなくても、自分の道を進みたいという欲望など、普遍のテーマが展開される。ただし、家事をバカにしちゃいけませんよ! 祖父も従軍時にやってるし、きちんと義務を果たしたのちに実験生活をしてるのだから。兄たちの恋をあきれて見守る君にも、恋は来るかもしれないしね。雪の中に足を踏み出すラストは象徴的。頑張れ女の子😆

語りべのドイツ児童文学 O・プロイスラーを読む

 

ドイツ語とドイツ文化史を踏まえたプロイスラーの研究書。とりわけ、プロイスラーの故郷がチェコの飛び地にあるドイツ領で、ソルブ人という少数カトリックの独自のアイデンティティを持っていた、という解説は、日本ではわからないニュアンスの知見でおもしろかった。プロイスラーがパウゼヴァングとの比較で社会性がないことを批判されたことについて触れた章もあるが、こうした一時的な批評は、どちらにしろ時の流れの中で淘汰されると感じた。パウゼヴァングは確かに社会派の作家だが、観念的な作家ではなく、自分の幼児期のナチスを目の当たりにした原体験に基づく作品の迫力はすさまじい。プロイスラーの評価によって、あえて低くする必要もないかも。『クラバート』は、主人公の成長の軌跡を大きなテーマとしているが、今でも変わらない魅力をはなっている。