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時をつなぐおもちゃの犬(課題図書)

 

時をつなぐおもちゃの犬

時をつなぐおもちゃの犬

  • 作者: マイケルモーパーゴ,マイケルフォアマン,Michael Morpurgo,Michael Foreman,杉田七重
  • 出版社/メーカー: あかね書房
  • 発売日: 2013/06
  • メディア: 単行本
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 第2次世界大戦時のドイツ軍の戦争捕虜が、戦後20年を経て、戦時中をすごしたイギリスの村に帰ってくる。偶然、戦時中すごした農場の子どもたちと出会い、彼らの母親に帰還の際にプレゼントしたおもちゃの犬の話をする。

事実を元にしたフィクションとのこと。ここに登場するのはビスマルク号に搭乗して救助された二人のドイツ兵で、一人は帰還直前に地雷の事故で命を落としたことになっている。

同じ戦時捕虜でも、時とところが変わればずいぶん状況が違う。シベリアの抑留とか、ドイツの収容所とか、バターン死の行進とか、そういう悲惨な実例よりも、村の一員に迎えられ、家族同然に過ごしたというイギリスの実情は、戦争という状況の中でも、人間的な交流があったのだ、という視点に支えられている。これはこれで一つの見識だと思う。

ただ、物語としてはやや散漫な印象は否めない。1966年のイギリスの農家、捕虜たちが暮らした農家の子どもたちの視点から、20年前の戦争の話しを聞く、という、、いささか隔靴掻痒な感じの設定。話題は戦艦だったり、犬だったり、その年のワールドカップだったり。ワールドカップの話しはそもそも必要なのか?

モーパーゴ自身のスタンスには一貫したものがあるとは思うが、物語としてはちょっと疑問点。