世界恐慌から第二次世界大戦直前までのヨーロッパの様子が同時代の中で描かれる最終巻。世界恐慌の実態が、ものがないことではなく、商品が十分あっても購買者が金を持っていないために売れないという指摘は、現在とシンクロして感じられた。自国を有利にするために関税を上げ、それでますます混迷していくところなど現代が歴史に学んでいないことが良く分かる。そしてファシズム、とりわけヒトラーの台頭が描かれているが、読んでいて驚いたのはイギリスがドイツを支持していたことだ。ソ連やフランスへの抑えのためにドイツを黙認し続けるイギリスがドイツからの空爆にさらされるのはこの後すぐだ。また、ルーズヴェルト大統領の政策が当時は議会で激しい反発を受け、国民からの支持でなんとか進めることが可能であったという実態も初めてしった。そしてイギリスとアメリカの間の最後の世界の金融の中心地を争う最後の駆け引きやスペイン市民戦争が描かれる。人間は、何度同じようなことをするのだろう。歴史に学ぶことの重要性をさいごまで印象付けてくれる本であった。