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ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

 

ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

  • 作者: レジョナルド・オトリー,クライド・ピアソン,倉本護
  • 出版社/メーカー: 大日本図書
  • 発売日: 1976/01
  • メディア: 単行本
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 オーストラリアの砂丘に近い農場で少年が、ベテランの猟師であるカンガが王さま犬を育てるために、生まれた七匹の犬の中からたった一匹を選び出し、後は殺してしまうという非情なシーンから物語が始まる。少年は、母犬ブロルガとたった一匹残った子犬ラッグズに夢中になって世話をする。どんな仕事でも手際よくこなし、少年が毒ムカデ二にかまれて苦しむとすぐ的確な処置をしてくれるカンガは、無口だが少年にとってはあこがれの存在だ(精霊の守り人でいえばジグロ!?)。農場には、食事の世話をしてくれるジョウンズ夫人、牛の面倒をみるロブやアボリジニ(本では原住民)がいるが、少年はみんなを尊敬し、まじめに働く少年をみんな目をかけてかわいがっている。子牛への焼き印つけ、すさまじい砂嵐などさまざまな体験を少年は真正面から受け止めて成長する。だが、カンガは母犬ブロルガを狩りに連れていくため少年から奪う。わかっていたことだが、少年の悲哀は深い。そして、どうしてもラッグズだけは渡したくなくて、ついに農場を飛び出してしまう。
少年の生い立ちについては何も描かれていないが、明らかに少年に家族の影はない。だが、犬を愛し、自然を愛し、仕事を愛し、周囲の大人たちを尊敬して成長していくさまが何とも魅力的な成長物語。