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ペルシアのむかし話

 

ペルシアのむかし話 (偕成社文庫)

ペルシアのむかし話 (偕成社文庫)

 

解説によると、ペルシア語の『千と一日の物語』は、アラビア語の『千夜一夜物語』(アラビアンナイト)に対抗して作られたそうだ。ペルシアとは今のイラン。7世紀アラブ人に支配されるようになってもペルシア文化を守り通したという。
むすめを「満月のように美しい」と形容したり「40人の」けらいや姉妹が出てきたりして、アラビアンナイトと共通する。窮地を救う道具立てが「塩」「針」「石油」だったり、結語に「でも、おしゃべりスズメ(または、いじわるカラス)は、日がくれても巣にもどりませんでしたとさ。」と鳥が出てくるのが地域性を感じて独特。

キツネが鳥たちを次々だましてニワトリ、アヒルと食べていくが機転の利くヤツガシラに仇をとられてしまう「キツネの巡礼」。

年老いた母親と2人暮らしの息子がたまたま働きに入った店が魔法使いのもので魔法の呪文をこっそり身につけた息子はそれでお金を儲け、最後は犬に変身してニワトリに化けた魔法使いを食べてしまう「魔法使い」など。

最後の「カラフ王子とトウランドー王女の物語」は、美しく知恵のある王子が、やはり美しく賢い中国の王女の出す難しい謎を見事に解いて結ばれる。中央アジアの国同士の覇権争いも描かれて壮大な物語。大河ドラマを思わせる。全17話。