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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ともだちのときちゃん

 

 わたしの友だちときちゃんは、おしゃべりがあまり得意じゃありません。わたしは、お母さんに「しゃべりすぎ」と叱られるくらい。だからわたしは、いつもときちゃんの代わりにときちゃんの気持ちを話します。学校の先生や近所の人へ。そしてときちゃんは、わたしの気づかないところをよく見ていて教えてくれます。さっき話した女の人のスカートのもようとか、アリの体がぴかぴかしていることとか。でも、何をするにもゆっくりなときちゃんを待っているのがいやになることがあって、わたしは時々オニごっこに入れてあげなかったり学校から先に帰ったりします。それでも、クラスのみんなで行った観察会でコスモスの根元に生えるたくさんの小さな草花や空に浮かぶ雲を見て「きれいだねえ」と一緒に思えると、やっぱりときちゃんと友だちでよかったなあと思うのです。
短い物語の中にはふわふわしたやさしい気持ちだけでなく、上級生に意地悪されるときちゃんを見て見ぬふりしてしまうヒリヒリするような思いも描かれます。それぞれのペースを認められたり、ちがうっていいなあと思えたりするのはいつ頃なんだろうと考えました。    (ふ)