児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

はい。赤ちゃん相談室、田尻です。

 

 熊本市慈恵病院の赤ちゃんポストこうのとりのゆりかご」は、2007年5月に開設され日本唯一であり続けている。その取り組みのスタートから看護師長として携わってきた著者の強い思いがつづられる。赤ちゃんの命と、妊娠・出産・育児に悩み追い詰められる母親(少女の場合もある)を救うこと、そして実の親と赤ちゃんが共に生きていけるように支援すること。私の記憶では、開設当時の報道は、育児放棄を助長するという否定的、懐疑的な空気が勝っていたような気がする。でも、本書を読んで全くそうではないことがよくわかった。赤ちゃんの受け入れは減っている一方、熊本市が24時間対応で行っている「SOS電話」(SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口)への相談は2019年上半期現在過去最高となる勢いで、全国の児童相談所への虐待相談件数もうなぎのぼりであることを見ると、日本の母子を取り巻く現状は危機的です。著者も、こうのとりのゆりかごはなくて済むほうがいいと言っているが、今の日本にはもっとあった方がいいんじゃないか。でも続こうとする病院が法規制に阻まれ断念せざるを得なかったりして(神戸市など)、国が真剣に取り組んでほしいと切に思う。
一般書だが易しい文章で書かれていて、巻末のキーワード解説も丁寧。中高生からの相談も受けている著者の願いや1人の職業人の生き方を知る意味でも若い人たちに紹介したい。   (ふ)