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希望の図書館

 

希望の図書館 (ポプラせかいの文学)

希望の図書館 (ポプラせかいの文学)

 

母さんが死んで、父さんは南部のアラバマから北部のシカゴへとラングストンを連れてやってきた。だが、学校には「南部のいなかもん」とバカにするいじわるなライモンがいる。優しかった母さんや、おいしかった手料理が恋しくてたまらない。ある日、ライモンを避けようとしていつもと違う道に行ったラングストンは図書館を見つけた。かつてアラバマで図書館に入ろうとしたら白人専用だと拒まれたけど、ここは黒人も入っていく。おそるおそる「この図書館は黒人専用?」と聞くと、誰でも在住の人なら本を借りられると教えられてびっくりする。そして自分と同じ名前の黒人詩人が書いた詩を読んで、心が震える思いがする。だけど父さんは、本なんか読むより友だちと遊んで欲しいと思っているから図書館通いは打ち明けられない。近くのフルトンさんは、学校の先生で荷物持ちをさせられたりしてなんだか好きになれないが、アラバマのおばあちゃんが亡くなり、父さんが帰省した留守に面倒をみてもらったことで打ち解ける。ライモンの取り巻き、と思っていたクレムと図書館で出会ったことで二人の関係が変わり始める。故郷と母親を亡くした男の子が、図書館で本に出合うことで励まされていくようす。ぎこちなかった父子関係が少しづつ改善されていくところが魅力的。