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小さなスプーンおばさん

 

小さなスプーンおばさん (新しい世界の童話シリーズ)

小さなスプーンおばさん (新しい世界の童話シリーズ)

 

 ある朝とつぜん、ティースプーンくらいに小さくなってしまったおばあさん。でもすぐにそれを受け入れて、どんどん行動していきます。小さい間は動物と話せるので、ネズミやネコを使ってうちの中を掃除し、雨風、太陽に威勢よく文句を言って洗濯もすませ、フライパンにはっぱをかけてパンケーキまで焼かせてしまいます。ご亭主が帰宅したときには元の大きさに戻って何事もなかったように食事をするのです。その後スプーンおばさんは、カラスの女王になったり、ぜんまい仕掛けの人形のふりをしてバザーでひと暴れしたり。おばさんが小さくなるのを知っているのは動物と子どもだけで(後々ご亭主も知りますが)、ほかの大人が見つけそうになるぎりぎりのタイミングで元に戻るので、読む子もドキドキわくわくスプーンおばさんの活躍に引きこまれます。12あるお話の最後「おばさん、たき火の山にのぼる」では、ご亭主の誕生日プレゼントをどうやって手に入れるかという話から、なんと大きなたき火の山のてっぺんから打ち上げ花火で脱出するというラストになってスリル満点です。
大人になって読むとスプーンおばさんの度量の大きさに感心します。ご亭主とのうまい夫婦関係にも学ぶところ大です。大人にもおすすめの本として文庫の通信に載せたことがあります。親子で楽しんでほしい1冊です。  (P)