児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ぼくがいちばんききたいことは

 

ぼくがいちばん ききたいことは

ぼくがいちばん ききたいことは

 

『家に帰る』母親が新しいボーイフレンドと暮らし始めたのに怒ったデイモンは、父親と暮らそうと考えるが、訪ねていった父は月に一度のデイモンの面会日を忘れ、3週間前に何も言わずに結婚をしていたことを知らされる。

『ぼろぼろ』大学時代にはボクシングのチャンピオンで、今は弁護士として活躍している堂々とした父。でもチャーリーは、そんな父親が何となく怖い(もちろん暴力を受けたりしていない)。ダンス・パーティーに行った帰り、通りでギャングの子どもたちとあったチャーリーは、恐ろしくて闘えない。殴られてすぐ気絶したふりをして何とか助かった。家に帰って事のしだいを話すと、父親からは闘わなかったことで軽蔑の視線を向けられ、ボクシングを習えと強制される。その時にチャーリーがしたことは? 

アマルフィ・デュオ』物知りで、いつも自分の知識を語らずにはいられないおじいちゃん。マルコは、ちょっとうっとおしく思ってはいるが、優しいのでそれを言えない。だが、たまたま一緒にリコーダーを習いだしデュオ演奏をめざそうとしたことで関係が変わってくる。必死に練習してもおじいちゃんは上達しないのに、マルコには才能があってみるみる上達していった。さて、おじいちゃんは?

『キッチンテーブル』父親が出ていってしまったビリーの家はやりくりが大変だ。だがママは、頑張って欲しがっていた自転車を買ってくれた。中古だったが、ビリーは心を込めて手入れをし、自転車レースに出るために練習を重ねた。なのに、盗まれてしまう! レースに勝てば新聞に載ってパパが見てくれたかもしれないのにというビリーを見る、ママの思いが切ない。

『去る』は、大好きだった父親が交通事故で突然死んでしまった12歳のルークの話。悲しみの中で、パパがいること、何かをして欲しがっていると感じるルークは、あることを実行する。

『ブリーフ派、それともボクサーパンツ?』は、ママが結婚したいという男性を父親として就職試験のように審査すると決めたライアンの話。推薦状による書類審査と面接。親が再婚するときは、ぜひこうありたい!?

『ドリーム・キャッチャー』は、一度もあったことがない父と不仲の父方の祖父の家にあずけられることになったポールの話。出会った祖父はどこかおかしく、間もなく祖父がベトナム戦争で心を病んでしまった事を知る。だが、祖父の話を聞くことで二人は普通の祖父と孫の関係へと変化していく。以上7編の短編が収録。深刻な作品からユーモラスな作品まで、短篇なので読みやすく楽しめる。特に『ブリーフ派・・・』は、再婚に巻き込まれる中で、相手が父親としてどうかを試験するという発想がゆかい。ともすれば、『家に帰る』の主人公のように親に振り回される立場の子どもには爽快だと思う。