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秘密をもてないわたし

 

秘密をもてないわたし I Have No Secrets

秘密をもてないわたし I Have No Secrets

 

 14歳のジェマは、聡明な女の子だが重度の脳性マヒのために周りに意思を伝えることができない。2歳の時今の家に里子に来たが、両親は忍耐強くて優しい。他にも9歳のオリビア、6歳のフィンが引き取られている。オリビアは自己主張が激しく攻撃的な女の子で、フィンは自閉症だが両親はその二人にも根気よく接している。介護ヘルパーのサラとは気が合っているが、最近ママとサラの間で微妙ないさかいが絶えないのと、サラの彼氏が感じが悪いのが心配。最近近所でライアンという青年が殺されたが、サラの彼氏ダンは、やつを殺したのはオレだとジェマに自慢した。誰かに伝えたいけれど、ジェマにはなすすべがない。まばたきで意思を伝える方法が数年前に成功し、ジェマに知性があることを知ってもらえたのだが、その後まばたきえうまくできなくなってしまったのだ。そんな時、ジェマには双子の姉のジュディがあるということがわかるのだが、同じころサラが行方不明になるという事件が起きる。絶対ダンが関係していると思うのに、誰にも何も伝えられない。そして、ジュディも何も意思を伝えられない歪んだジュマの姿を見て、おびえて逃げてしまう。絶体絶命の中、ジュマは、鼻で息をする強弱から言語変換をするという試験的な試みにチャレンジし、さっそくダンを告発したが、アリバイ証言が出て警察は信用してくれない! 
意思が伝えられないもどかしさ、見かけのせいで知能も低いと思われて幼稚に扱われたり、憐れまれる辛さ、弱い体のために体調を崩すことも多い。だが、ジュマはなんとか道が拓けることを願う。作者は10代のころから重度障害者のボランティアを始め、現在は養護学校の教諭。そうしたキャリアが、聡明だが思い障害に苦しむジュマの姿のいきいきとした描写に活かされている。それをサスペンスのあるエンターテイメントとして楽しく読ませてくれるのがすごい。それにしても、重度障害児や自閉症の子を複数里子に迎えてくれるしっかりした家庭があるイギリスはすごい。さすがに、イギリスでもスペシャルケースなのでしょうか?