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リンゴの丘のベッツィー

 

ベッツィーは9歳。赤ちゃんの時に両親を亡くして、大おばさんの元でとても大切に育てられていました。大おばさんの娘のフランシスおばさんが、ベッツィーに何かあってはいけないと、いつも目を離さず、気を回していたのです。

でもある時、大おばさんに大変な病気が見つかると、ベッツィーはべつの親せきへ預けられます。そのパットニー家は農場で、これまでとは全くちがう暮らし。ベッツィーは自分のこと何でも自分でやるように仕向けられます。

自分で起きて服を着ること、食事をとって片付けることに始まって、初めての学校にもひとりで行くのです。ベッツィーは、田舎の大らかな人たちに囲まれて、眠っていた力をどんどん開花させていきます。

そして再び、フランシスおばさんが引きとりに来たとき、ベッツィーは自分の意志で、パットニー農場に残りたいと宣言するのです。

ベッツィーが、自分で考える力をカチっと目覚めさせる、荷馬車の手綱をあやつる場面の、快哉を叫びたくなる気持ちよさ。

初めてアップルソースを作ったとき、オオカミ穴に落ちた幼い子をひとりで助けたとき、迷子になった品評会の会場からちゃんと汽車に乗って帰ってきたとき。短くさっぱり、時には熱くほめる、パットニー家のおばさんや大おじさんは、「赤毛のアン」のマリラとマシュウを思わせますが、本作は、よりベッツィーの心の不安、うれしさや満足感をていねいに描写し、同年代の子どもは自分を重ねて読むことでしょう。 (は)