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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

絵本戦争 禁書されるアメリカの未来

 

衝撃的なタイトルです。禁書と言っても、州や学区ごとに行われているもので、アメリカでは、禁書推進派に対抗する組織的な活動(ペン・アメリカやアメリカ図書館協会)がちゃんと存在する。でも、我が子のために、「親の権利」という正義のもと行われる過激な禁書推進の主張には、危機感と恐ろしさを覚えます。

著者は、禁書対象として主にターゲットにされやすいYA(ヤングアダルト)ではなく、絵本に焦点を当てた。人として最初の成長期にある子どもへの影響を、最も危惧するからだ。

絵本約100冊について、「黒人」「LGBTQ」「女性」「障害」「ラティーノ/ヒスパニック」「アジア系」「イスラム教徒」「アメリカ先住民」8つのテーマに分け、1冊1冊を、背景、内容、意義、禁書の理由(中にはなぜなのかわからないものもある)を、詳しく検証している。その結果、著者の言うとおり、禁書への危機感の一方で、「アメリカの絵本の限りなく豊かな世界」を知る発見の感動も味わいます。

とはいえ、「こどもとしょかん」第186号(2025年夏、東京子ども図書館)には、日本ペンクラブ副会長の山田健太氏が「こうした状況は決して対岸の火事ではない。」と警鐘を鳴らし、私たちものんきではいられません。 (は)