広島で床屋を営みながら、幸せに生きていた一家の実際の写真の記録。写真の中の子どもたちは表情豊かで、生き生きとして楽しそうだ。戦中にこれほどの写真を撮って残した父親は、経済的にも恵まれていて、センスがあったのだろう。特に戦争の影さえ感じさせないような楽し気な写真。そして、この一家が広島に落とされた原爆のために全員なくなったことが最後に明かされる。戦争とは、ある意味特殊な状況ではなくて、日常のすぐ隣にある恐ろしさを私たちに教えてくれる。この本を見て、ごく普通に楽しく生きようとしていた家族が、なぜ死ななければならなかったのか? という問いに直面するとしたら、それは過去ではなく現在とつながっていることだろう。なぜなら戦争は今でも無くなっていない。日本の中でも沖縄には米軍基地があるし、戦場になって殺されてしまう子どもや、難民となる家族もいる。かわいそうから一歩進んで、自分はどうすればよいのか考えたい。