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はだしのゲン 第2巻 麦はふまれるの巻

 

1945年8月6日、広島市は、地獄と化した。幸い助かった母親とゲン。燃えさかる市街地を抜けたところで、母親は産気づき、ゲンが妹友子をとりあげる。ちちの出ない母親のために米を探しに出かけたゲンは、市内の惨状を見る。一瞬にして焼けた人々。死体にわくウジ。腐っていくにおい。皮膚がたれ、ガラスが刺さったまま歩く人。体中に紫色の斑点。下痢や高熱、血を吐く人。まもなくゲンも、髪が抜けてしまう。それらは、原爆の放射線によるさまざまな症状だった。

ゲンたちは、母親の親友の家に身を寄せるが、肩身は狭い。米を盗んだぬれぎぬで警察へ連れていかれた母親は、「死ぬも地獄、生きるも地獄」と弱音をはく。「わしが犯人をみつけてやる。おかあちゃん強くなれ」とゲン。

この巻で、ゲンは、家の下敷きになって死んだ姉に似た夏江と、弟に似た隆太と出会う。夏江は顔の火傷を悲観し死のうとしており、隆太は戦争孤児で、子どもたちだけの過酷な暮らし。ゲンは一貫して、出会う人たちを「生きろ!」と叱咤激励する存在なのです。

一方、戦争指導者たちは、広島の被害を隠して戦争を続け、3日後に長崎へも原爆投下。ようやく、無条件降伏へと動き出した。
原爆は日本にいたアメリカ兵も殺したこと。ゲン一家が親しくしていた朴さんの父親が、朝鮮人差別で治療も受けずに亡くなってしまったこと。忘れてはならない加害と被害も描きます。 (は)