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その年 わたしは嘘をおぼえた

 

その年、わたしは嘘をおぼえた

その年、わたしは嘘をおぼえた

 

1943年。まもなく12歳になろうとしていたアナベルの日常は突然激変した。近所にベティが引っ越してきたのだ。14歳で「矯正不可能」だから祖父母のいる田舎にきたという噂の少女。アナベルは、ベティに何か持ってこいとさっそく要求され、人から見えないところを狙って叩かれるが、いいつけるようで親に相談できない。学校でも年齢の異なる40人近い生徒をたった一人で教えている先生には気付いてもらえない。このまちの谷近くに住みついているトビーは、前の戦争(第一次世界大戦の従軍)でおかしくなったとのことで、ほとんど言葉もしゃべらない男だが、ベティに攻撃されたアナベルを助けてくれた。だが、ベティはトビーをも標的として定める。まわりに打ち明けないことで、嘘を重ねていくことになるアナベルだが、弟に手を出されたことで、ついに親に打ち明ける。だが、ベティはシラを切り、ベティの祖父母はベティを信じる。そんな直後、ベティは行方不明になってしまった。トビーが容疑をかけられるが、そんなことがあるはずがない! アナベルはトビーを守ろうと動き始める。その中でトビーの心が病んでしまった理由を知ることになる。だが、ベティはどこに? アナベルは、ベティの居場所がひらめき、全てを解決するための計画を進めるが・・・。戦争の影の中、底知れぬ悪意を持つ人間からの攻撃という陰鬱な展開に、読み進めるのが最初辛くなる思いがあった。だが、そこに希望の強さを感じる作品。