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ジョゼッペとマリア 下

 

ジュゼッペとマリア〈下〉

ジュゼッペとマリア〈下〉

 

 たどり着いた“子どもの町”は、物資を運ぶトラックを狙って盗む子どもたちと、それをピンハネする舎監のベソーミ(あだ名はカエル)とアンジェラ(あだ名は魔女)夫婦の支配するとんでもない場所だった。泥棒をいやがったジョゼッペは、さっそく子どもたちの町長テラと対立してしまうが、アントーニオという味方もできる。マリアは、魔女にちやほやされて物乞いをしながらダンスを披露する役を割り当てられ、そこが気にいってしまう。だがアメリカ軍の物資倉庫に続き、列車強盗までしようとする仲間と、ついに袂をわかとうとするが、ジョゼッペの予想通り列車強盗は失敗。軍の捜査がはいると、あろうことか舎監夫婦はジョゼッペを犯人に仕立て上げて告発した。マリア、アントーニオ、ダニエレと共に逃げ出したジョゼッペは、旅立ちの時に出合った黒人兵ナポレオーネと再会して助けられローマに到着した。だが、舎監たちが軍警察と共に追ってくる。ローマの浮浪児の子どもたちに助けられて逃げる中で、ファシズムに抵抗したことで流刑になった弁護士ディオゲネと出会い、法廷で争うことになった。両者の主張を日替わりでのせることで新聞の販売部数を伸ばす記者ロベルトなどひとくせもふたくせもある脇役たちも登場。だが、法廷では予想外の展開もあり無罪を勝ち取った! ところが、ここでハッピーエンドで終わらないのがこの作品のリアルなところ。子どもの町を再建しようというジョゼッペの試みは簡単には実現しないのだ。だが、希望を抱いて物語は幕を閉じる。上巻でも目に着いたマリアのちゃっかりかげんや、子どもたちの助け合い。そしてディオゲネ弁護士の切々とした戦争で暮らしを破壊された子どもたちへの弁論、またジョゼッペを助けてくれる米兵たちが黒人兵やネイティヴアメリカン兵、日系アメリカ人だったりするところにも作者の思いがあふれてくる。だが、裁判の行方のドキドキなど、サスペンスもあり、最後まで楽しく読める。