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闇の戦い3 灰色の王

 

闇の戦い〈3〉灰色の王 (ファンタジークラシックス)

闇の戦い〈3〉灰色の王 (ファンタジークラシックス)

 

重病から回復したウィルは、静養のためウェールズのおば(正確には母の幼なじみの親友)の家に行くことになった。だが、高熱で消耗したウィルは、何か重要なことを忘れてしまった不安にさいなまれている。古の言い伝えが生きるウェールズで、おばさんの一家は暖かく迎えてくれるが、彼らの近所に住むプリッチャードは、絶えず欲求不満と怒りをあたりにまき散らす不気味な男だった。そしてウィルは、自分と同年代の少年ブラァンと出会う。生まれつき色素がないため変わった外見をしている彼は、母親がなく、父親もよそよそしく村人から孤立している。孤独の影を持って素晴らしい犬のカーヴァルだけを友人として孤立して暮らしていた。彼に会った瞬間、ウィルには古老としての記憶が戻る。ブラァンは何かの鍵となる人物だと直感するが、その正体がわからない。黄金の琴の探索と、灰色の王が支配する山に眠れる者の目覚めのためにウィルはブラァンのために動き出すが、強烈なプリッチャードの憎悪はブラァンの愛犬カーヴァルの命を奪い、彼の隠されていた過去の秘密を最悪の形で暴き立てた! 光と闇の戦いの中で、謎の少年ブラァンの覚醒が魅力。だが、読みながらまがいなりにも人間であったのに、闇につけこまれて暴走するプリッチャードの姿が、現在世界に蔓延している憎しみの連鎖とあまりにも重なって見えて恐ろしかった。