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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

星へ行く船

 

著者とは同年代なので、デビューからほぼ全作読んでいる(エッセイで読んでないのが少しあり)。この作品も1981年発表時に読んでとても楽しんだ記憶があるが、再読してみて驚いた! 何が、とは設定に。主人公のあゆみちゃんが19歳で婚約者がいて短大卒業したら結婚予定で、友人にもそういう子がいて、ふと、そんな未来に抵抗を感じて宇宙に家出をするというのがスタート。男装して兄になりすますが、男性がお茶を入れるのを見ると落ち着かなくなるという設定。当時も、このお茶をのシーンに実はビックリでした(常識がなかったせいか、職場も当番制でお茶を女性が入れる習慣がなかったせいか・・・思い返せば1980年代では画期的な職場?)うわぁ! さすがに、現在こういう設定見たら中高生引く? それとも時代小説として読み飛ばし? ともかくも、悪運の強さとカンの良さである事件を切り抜け、探偵事務所的な職場で活躍開始というストーリー。とはいえ、細かい設定には「無理!」と思いつつも、今回も十分に楽しめた。特に印象的だったのが「雨の降る星 遠い夢」ここで、人の意識を微妙に操る植物がでてくるのだが、悪意はない、むしろ善意、けれどもきちんと向き合おうとせずに被害者として流されている心地よい状態に身を置いて「しかたがないし」という態度を取るって、これはむしろ今の方が当時よりすごいかも。なんだかSNS情報の流れの中で、周りに同調したり空気よみつつ情報発信しているのを重ねてしまった。あらためて、新井素子さんは、こういうのを書くのがうまいと思った。一見稚拙にもみえるように言葉を重ねているのに、ジワジワと素直に効いてくる。久しぶりにシリーズ読み直します20代とどう変わったかな?