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さいごのゆうれい

 

詩人の作者。比喩やオノマトペ、詩のような表現が独特な文章。

ハジメはお父さんと2人暮らし。小さい頃にしんだおかあさんのことは覚えていないし、かなしいと思ったこともない。小5の夏休み、母方のおばあちゃんちで過ごし、ネムという小さな女の子と出会う。自分は「さいごのゆうれい」になるかもしれないというネム。そこへ、絶滅存在保護機構のミャオ・ターとたくはつ僧のゲンゾウも加わり、ゆうれいを守ろうと動き出す4人。やがて、ゆうれいの減少と人々から「かなしみ」が消えたことのつながり、そして「かなしみ」を感じなくなったのは、ハジメのおとうさんがおかあさんを失った苦しみの中で開発した薬のおかげで、それはいまや世界中の食べ物に入れられている、ということがわかってくる。はたしてハジメネムを救うために世界に「かなしみ」を取り戻す決意をするのか・・・。

おとうさんやミャオ・ター、ゲンゾウそしてハジメ自身も亡くしたひとへの思いを取り戻すときに、相手へと架かる橋をそれぞれに渡る。その橋は、世界中のかなしみの苦しさを分かち合いお互いを思いやることの象徴で、それを失う方へ加速している今の世界への警鐘と、未来へ託す希望のように感じました。 (は)