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天山の巫女ソニン3 朱烏の星

 

イウォル王子の乳母に連なる一族が国境を侵した罪で捕らわれた! 元々放浪して暮らす森の民だ。些細な事件だが、この解決をきっかけに先の戦争以来途絶えている国交を回復しようとイウォル王子は巨山(コザン)に向かう。巨山の王の一人娘イエラ王女は聡明だが、聡明過ぎて周りの感情的な発言が理解できない。イウォル王子とソニンはオオカミ殺しの王として名高い巨山王と会うが、予想に反して魅力的でおおらかな人物だった。国民の人気は絶大。直前の敗戦は、全く影を落としていなかった。そしてイエラ王女とソニンも出会う。冷静なイエラ王女にソニンは圧倒されるが、王女は何かにいらだっていた。無事に乳母の一族も解放され、今後の交流の目途もついた帰り道、一行は巨山国に住む森の民に襲撃され、王子は捕らわれてしまう。森の民は巨山王がオオカミを狩ってしまったために森が荒れ、暮らしに追い詰められて先の戦争で兵士となって大量の死者を出していたのだ。都の王の人気の裏側にあった一部の人間を切り捨てるように利用した行為に恐怖する王子とソニンだが、反乱を起こせばつぶされるのは森の民! イエラ王女の予想外の助けもあって、なんとか事を収めようとするソニン。巨山国を治ていくために必要な欺瞞や、一部の人間を犠牲にした繁栄。だが、そうした王の評価がむしろ高いという矛盾。3作目になり、世界観がはっきりしてきた感じが魅力。