児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

みつばちと少年

 

雅也は、中学生になったら一人で遊びに来てもいいといったおじさんの所へ夏休み遊びに来た。三重から電車を乗り継いで北海道へ、おじは養蜂家でミツバチを飼っている。ところが、叔父の家ではなく、近くの「北の太陽の家」で寝泊まりすることになり驚く。実は雅也は発達障害というトラブルを抱えていて、同級生とうまくやっていくことができないのだ。この家では、さまざまな事情で家族と暮らせない子どもたちがすごしていた。そんな中で、雅也は同じ年の海鳴(かいなる)、小1の瑛介、小3のゆず、5歳の麻央、小5の杏奈の5人と出会う。『みつばちマーヤの冒険』の物語が、たえず引用され、雅也が初めて友だちを作る喜びを得て、杏奈のためにみんなでイカメシコンテストに挑戦する物語となっている。雅也の発達障害のトラブルは、言いすぎてしまう様子として書かれているが、その割には北の太陽では、あまりそのようすが出ない感じもする。例えば『夜中に犬に起こった奇妙な事件』マーク・ハットン著 の主人公などは、どうしても他の人を理解できない主人公の様子がきっちり書かれているが、雅也は他の人について理解できないというより言い出したら止められない子? という位。今まで、一人も友人ができなかった子が、トラブルを抱えた子たちとすぐなじむのも、正直不自然に感じてしまった。そして養蜂家の暮らしや蜂の生活についても、具体的に描かれてはいないので、ざっくりした背景画のよう。読みやすいが、物足りない。だが『みつばちマーヤの冒険』を読みたくなった。