AJの中学入学直前、おじいちゃんが突然死んでしまった。AJの両親は普通の人とはちょっと違う。母さんはとても優しいし、父さんもいつも穏やかだが、二人とも難しいことはできない。家計の管理や、請求書の払い込みなどは全部おじいちゃんがやってくれていた。請求書が届いても父さんも母さんもどうしていいのかわからない。母さんの妹ジョセフィーンは近くに住んでいて、いとこのアイシャはよくうちであずかる。でももうすぐジョセフィーンには2番目の赤ちゃんが生まれるから、心配かけるわけにはいかない。走るのが得意で大好きなAJだが、小さくなってしまったランニングシューズのせいでうまく走れない。かといって家にお金の余裕があるとは思えない。だが、幸いヒギンズ先生は事態に気付いてくれて、忘れ物の靴の整理を手伝わせ、引き取り手のない古い靴の中から合う靴をAJにくれた。おかげで思いっきり走れるようになったAJは選手に選ばれる。だが、家ではトラブルが続く。電気メーターに入れるコインがなくなり両親は途方にくれていた。AJはシューズを売ってお金を手に入れるが、誰にも言えない。トラブルがわかれば両親から離されて施設に入れられてしまうのが怖いのだ。シューズがなくなったことを言えないまま試合をさぼり、ヒギンズ先生が家庭訪問に来て全てがバレてしまうのだが、結果的にはさまざまな誤解が解けて解決する。走るライバルのアミット。ちょっと生意気なアイシャ。おばの夫でそりが合わないと思っていたタイラーの意外な素顔。そして大切なおじいちゃんのさまざまな思い出。たしかにAJの置かれている状況は困難だけど、それをさらにややこしくしているのは、彼の思春期の屈折した自意識過剰や思い込みもあって、それはどの子にもある。特別だけど、特別ではない一人の男の子の物語として共感できる。