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アースーシーの風 ゲド戦記6

 

再読したが、カルカドの王女のエピソード(王は、最初は遠ざけていたが、しだいに変わっていくようす)の印象しかおぼえていなかった。と言うのも、この物語が複雑さを含んでいるからではないだろうか? 王が即位して安定したと思われた世界が、やはり揺らいでいる。その原因を表しているかのようなハンノキの夢。死んだ妻を思い、死者の国に呼ばれる。死者と私たちの世界の境とはなんなのか?という問題が改めて突きつけられる。「さいはての島へ」で赴いた死者の国、そして竜の世界。この複雑さが、明確なイメージを私に残してくれなかった原因だろう。初期の3部作はシンプルな英雄譚だが、世界は混とんとして、英雄の活躍ですべては終わらない。物語は複雑になり、私たちは迷いながら道を見つけなければならないと言われているようだ。