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小さな手 ホラー短編集4

 

ホラー小説好きという英米人。19、20世紀の作品を8編おさめる。

コウヴィル作「首を脇に抱えて」は、王の前で戦争反対を述べて処刑された若者が、たくさんの死者とともに兵士たちの夢枕で死の恐ろしさを説き、戦争をやめさせる。

表題作を含め、「手」にまつわるものが3編。田舎の閑静な家を借りた女性と、かつてその家に暮らし7歳で亡くなった少女の霊との交流(キラ-クーチ作「小さな手」)。3つの願いをかなえるという干からびた猿の手に、借金返済を願った家族の悲しく切ない結末(ジェイコブズ作「猿の手」)。ハーヴィー作「五本指の獣」では、ある盲目の研究者が自動筆記(本人の意思なく文字を書きつづる)の能力を身につけ亡くなる。ある日、甥の元にその右手だけが届き屋敷内をうろつくようになり、住人を震えあがらせる。

ほかに、夫を亡くした女性の孤独につけこむ少女の霊の恐怖(カポーティー作「ミリアム」)、1人の女性の死を、息子、夫、女性本人の立場から述懐した(ビアス作「月明かりの道」)、医学校の解剖授業のために殺人が繰り返される(スティーヴンソン作「死体泥棒」)、森の中の屋敷に迷いこんだ男性に声と気配しか示さない子どもたちの存在と、盲目の女性との交流(キプリング作「子どもたち」)。 (は)