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ふしぎなともだち

 

2年生の冬休みに島へ引っ越してきたぼく。同じクラスのやっくんは、ひとりごとを言ったり、とつぜん教室を飛び出したりするのに驚いた。でも、ほかのみんなは気にしない。いけないことをした時はやさしくおしえてあげて、みんなで包みこんでいるよう。「自閉症というしょうがいがあって、おはなしするのがにがてなの」と、先生がおしえてくれた。気持ちを落ち着かせるためのひとりごとは、副作用のない薬なんだ。

中学校もみんなと一緒の学校に上がったやっくんを、知らない上級生がいじめるので、ぼくが助けに入ったら、やっくんは「ありがとう、ありがとう」と何度も言って帰った。おとなになって、ぼくは郵便局の配達員、やっくんは作業所でメール便の配達をするようになった。風の強いある日、郵便物を田んぼに落として、ぼくが泣きながら泥をふいていると、やっくんが来て、「はい おしまい、はい おしまい」となぐさめてくれた。やっくんは、言葉でなくて心でわかり合える、ぼくのふしぎなともだちだ。
田島征彦氏が淡路島に暮らしながら、実在のモデルをもとに制作した。型染めの風景は美しく、島の人たちの姿は生き生きと躍動している。 (は)