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生きのびるための「失敗」入門(14歳の世渡り術)

 

中学時代いじめに遭ったという著者。「美談ではない、ただの大人の失敗談が聞けたら、どんなに楽に」なれていただろうとの思いから、7つのインタビューと対談を本書にまとめた。
作家あさのあつこさんは、子育ての失敗を振り返って「親は捨てることができるよ」という解放を、探検家は「計画することが失敗の始まり」という価値観を、引きこもりや醜形恐怖症経験者は、「人生の、かなりの問題が、場数と慣れで解決」するから、失敗に慣れることだ!というエールを送る。
どの話からも浮かび上がってくるキーワードは、生きていていいという「自己肯定感」と「他者や社会への信頼感」。中でも、臨床心理士の東畑開人さんの言葉にはっとします。「成功体験の前に必要なのは、なんらかの安全感や信頼の回復」なのだと。私も、若い人がやってみようともしないことに対して、成功体験がないからだと思ってきたひとりでした。ちなみに東畑さんは、「母の友」2022年4月号(福音館書店)でも「自己肯定感の真実」をわかりやすく解説。「自己を肯定する作業は~まわりがすること」と話されていて、目からうろこがおちました。 (は)