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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

わすれたって、いいんだよ

 

わたしのおばあちゃんは沖縄料理屋をやっている。お客さんが落ちこんでいると、「なんくるないさー」(どうにかなるさ)と励ましたり、わたしたちの誕生日にはいろいろなごちそうを作ってくれる。でも、ムーチーを食べたいと頼まれたときだけは「つくれないの」とか、自分の誕生日のことは、「わすれてしまったさー」と言う。どうして?

ある日ママが教えてくれた。おばあちゃんが小さいとき戦争をしていて、誕生日祝いのムーチ―をつくろうと月桃の葉をとりに出たお母さんが、爆撃にあって死んでしまったのだと。おばあちゃんにとって、誕生日は悲しい日だったんだ。そのおばあちゃんが認知症になって、ある日、「ムーチーが食べたい」と言った。わたしはママと一緒に張りきってムーチーを作った。おばあちゃんの初めての誕生日会は、お客さんたちがみんな踊り出して、おばあちゃんもとても楽しそう。おばあちゃん、わすれたって、いいんだよ。わたしが覚えていてあげるからね。

沖縄戦もテーマではあるが、認知症を前向きにとらえられる絵本。 (は)