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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

風の神送れよ(2022課題図書小学校高学年)

 

コロナ下での疫病を追い払うための子どもだけで行う伝統行事をテーマにした本。タイムリーだが、読み始めてすぐ違和感を感じた。主人公優人が微熱を出すところから始まるけど、発熱してるのに病院行かないし抗原検査もしない! これ、アリ? 舞台はコロナ患者が発生していない長野の小さな村だけど、コロナ下でも、地方はこんな感じだったの??? あとがきを見たら、この行事は実際に行われているものだが、2021年度はコロナで中止になったという。そこでせめてお話の中だけでも、という動機で書いたらしい。しかし、そのためにリアルさが無くなっているような気がした。子どもたちだけの伝統行事で、縮小しつつもコロナ下だからこそやるんだ、と頑張るみんな。そして主人公は、それまで早起きが苦手で2日間のうち2日目は全く参加していなかったのに、5年生になったため頭取(リーダー)の補佐をやることになり、しかも頭取で優秀な凌さんが直前でけがをしたため、リーダー役の一部を肩代わりすることになり、不安につぶされそうだがやり遂げる、という展開。病院もワクチンもなかった時代に、なんとか病を止めたいとこうした行事が起こったことはよくわかる。だが、この村では感染者がいないようだが、それにしては普通に行事に取り組み、当日の描写で消毒シーンが入っている程度。これは、むしろ中止という深刻な事態の中で、昨年のことを思い出しながら、この行事の意味を再発見する的な展開もアリなのでは? と思いました。