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ひそひそ森の妖怪ー妖怪一家九十九さん

 

妖怪と人間が仲良く暮らす町の市役所に、地域共生課があります。日中は人間の野中さん、夜は妖怪一家のヌラリヒョンパパが、住民の相談を受けています。

ある秋の日、新しい住宅建設予定地のことで調査依頼が入りました。近くの”ひそひそ森”から気味の悪い声が聞こえるというのです。さらに、現場監督のおじさんが丸太ん棒に襲われる、という事件が。しかもその丸太は「バカモンは、おまえだ、バカモン!」と、ひそひそ声で言ったというのです。妖怪がついているとにらんだヌラリヒョンパパ。なんでも見通す目をもつ息子のハジメ(一つ目小僧)に見せようと、丸太を家に持ち帰りますが、すでに妖怪は、丸太からパパのライオン・ステッキにのり移っており。その後、次々と居場所を変えて、最終的に、児童公園の遊具のライオンの中へ。

実はその昔、ひそひそ森の一帯はお殿様のお狩り場で、たくさんの動物が殺されました。この妖怪は、そのうちの狐の霊”コダマ”だったのです。ヌラリヒョンパパは、新しい住みかとして裏山にある神社の狛犬を思いつき、コダマは安息の場所を得ることができました。それから時折聞こえるひそひそ声は、登山客を「ガンバレ!ガンバレ!」と励ます幸運の声となったのでした。 (は)