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真実の裏側

 

2001年カーネギー賞受賞作。ナイジェリアに住むシャデーとフェミの姉弟は、やさしい両親と共に幸せに暮らしていた。だが、ジャーナリストの父が反政府記事を書き続ける中、自宅は襲撃を受け、二人の目の前で母が殺された。このままでは危険だ! 叔父の手配で、まず姉弟がイギリスの叔父を頼って出国し、父も追って亡命することになる。だが、姉弟の保護者を演じた女はうさん臭く、やっとイギリスにたどり着くものの、叔父の家につく前に二人を放置して逃げた。なんとか自力でたどり着いた叔父の家には誰もいない。正体がバレれば、父の出国に支障がでるかもしれないと言い聞かされていた二人は、本名さえ言えずに、イギリスの路上で途方にくれた。トラブルをかかえた子どもとして保護されても、フェミは自閉的な状態になって何もしゃべらなくなってしまう。学校では意地悪な子に嫌がらせをされ、言う事をきかなければ弟に手を出すと脅されて、万引きをさせられた。なにが正しいのかさえわからなくなるシャデー。やっと父もイギリスについたことが判明するが、父は子どもたちを探そうとあせるために、難民申請の手続きをのがし、ナイジェリア政府は、妻の殺害容疑で父を本国に連れ戻そうとしていた。父が本当のことを言っていることを、何とかして信じてもらわなければならない・・・。いきなりの母の死、亡命、子どもたちだけでの孤立無援。次々に目の前に立ちはだかるトラブルを前にしても、必死で先にすすもうとするシャデーを応援したくなるが、イギリスでもこうなのか、難民に冷たい国日本だったらどうなっていたのか? と思わず思った。こうした現実がなくなりますように。