児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 児童書として出されたわけではないが、イギリス在住の著者が11歳の息子が入学した地元の元底辺中学校に通い始めた息子の日常を描いた作品。ちょっと読書力のある子にとっては、自分と同じ位の年齢の子が主人公といってよい内容なので面白く読めると思う。著者は低所得者が多い地域で保育士をしている日本人で夫はアイルランド人。別に教会に行っているわけでもないが、たまたま両親二人ともカトリックだったためにカトリック系公立小学校に息子を入れた。少人数で、様々な国籍の教育熱心な親が多く、まじめで手厚い教育をする学校で息子はすくすく育った。地域でも一番のエリート校、みんなほとんどそのまま系列の中学に進む。だが、最近底辺校から評判が変わっているという地元校を、好奇心で見学に行ったことで運命が変わってしまう。派手な子が多いし、校長は元気いっぱいだけど軽い、でも演劇や音楽に力を入れていて(学校が楽しければ、外で悪さをしないだろうという発想)学校にパワーがあり著者である母親はすっかり気に入ってしまう。父親はほとんどが低所得の白人イギリス人の中に、小柄で東洋人の血をひいているヤツがいったらイジメにあると大反対。進学率もダントツカトリック校が有利。だが、彼の友人がそこに進学すると決めたこともきっかけになり、息子は自分でその中学への進学を決めた。いきなりのミュージカルで、自分もパキスタン人だというのに周りを差別しまくるダニエルともめるが、冷静に対応してまさかの友人関係を築いてしまう。そして、底辺校ならでの制服が買えなかったり、お昼を万引きする生徒たちとも友だちとなり、差別発言をしてからんでくる上級生をさりげなく無視し、自分の居場所を手に入れていく。著者も自分も給料を削られる中で、子どもにお昼代をあげたり、定期を買ってやったりする教師たちの実態を知りながら、福祉が切り捨てられた先にある冷酷な社会を目の当たりにする。こんなにいい子っている? と思う位、常に前向きに進む息子の姿はすごい。でも、ふと思った。カトリック校でしっかり守られてしつけられたベースが問題校で立ち向かう力になったのではないかと。同時に、ぐちゃぐちゃの大人の世界に入る前に、思春期というタイミングで経済的に問題がある現実を反映した子たちと、学校という大人のサポートを受けながら自分もその一人として過ごすって理想の教育プログラムかも。最後、彼は自分は「ブルーではなくグリーン」だという。グリーンは未熟の色、その自覚ができる君は、もう大人だよ!