児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ワニくんとパーティーにいったんだ

 

ワニくんとパーティーにいったんだ (児童書)

ワニくんとパーティーにいったんだ (児童書)

 

 マッティは熱を出したのでおじいちゃんと留守番。パパとママとおねえちゃんは女王様のパーティに行ってしまった。おじいちゃんは椅子で眠ってるだけで、悔しくてたまらない。ところが、突然ベッドの下から大きなワニが出てきて、王さまライオンのパーティに連れていってくれた! ケーキを食べて、トラくんのジャングルカート、ゴリラくんのスーパージャンプ、ヘビさんのクネクネスライダー、きらきらサカナの遊覧船と、楽しく遊んですっかりご機嫌。雨はふるし、女王様には会えないしとガッカリしたみんなが帰ってきた時には、マッティはニッコリ。動物の国のパーティが楽しそう。

口ひげが世界をすくう?!

 

口ひげが世界をすくう?!

口ひげが世界をすくう?!

 

 ヨーヨーは、おじいちゃんのことがとても心配。ヨーヨーも大好きだった素敵なおばあちゃんが死んでしまってから、おじいちゃんの元気がすっかりなくなっちゃったから。でも、一日中新聞をながめてぼーっとしていたおじいちゃんは、ある日突然活動を開始した。なんと世界ひげ大会にチャレンジすることを決意したのだ、ひげなんて全然生えていないのに! でも大丈夫、大会までは日数がまだある。ヨーヨーはおじいちゃんが必ず優勝するために、全面的に協力を開始した。でも、家族は誰も応援してくれない。大会では強敵がそろっている。どうなるおじいちゃん? ユーモラスなドイツの児童文学。ヨーヨーとおじいちゃんが考えた秘策は、ぜひ本でごらんください。

フローラ

 

フローラ (SUPER!YA)

フローラ (SUPER!YA)

  
 フローラは前向性健忘症。10歳の時に脳に損傷を受け、それ以前のことは覚えているが、それ以降のことは記憶することができない。もう17歳だけど、自分が17歳だということもすぐに忘れてしまう。だけど、親友のペイジの彼ドレイクと海辺を散歩して、すてきな彼にキスされた記憶は消えなかった。ドレイクはその翌日にイギリスを出て北極に近いスヴァールブルに留学に旅立ってしまったけど、フローラは忘れなかった。そんな折、兄さんのジェイコブがパリで病気で倒れる。重傷で両親は駆けつけることになり、十分な用意をしてペイジに泊まりに来てくれるように頼んだ。ところが、直後、ペイジはフローラとドレイクとのことを知って激怒して絶交を宣言し、フローラは一人で留守番をすることになった。一人で必死にドレイクとの記憶にしがみつくフローラは、ドレイクにメールを出す。フローラを思うメールが返ってきたことに思いを募らせたフローラは、たった一人でドレイクのいる北極近くの地まで行くことを決意する。留守用に置いてもらったクレジットカードで飛行機を手配し、自分が何をしようとしているのかのメモをつくる。たえずメモを作り、手に重要なことを書き、スマホで写真を撮っておくことを繰り返すフローラ。そしてスヴァールブルについにたどり着く。何度も記憶を確認するフローラ。会ったことのある人が、初めての人になってしまう不安。他の人と同じになりたいという願い。10歳の心と17歳の心が同居するようなフローラの言動にハラハラしながら、大丈夫なのか? とフローラを見守る思いで物語の先を読まずにいられなくなる。物語は思いがけない方向に展開し、フローラが10歳の時に本当は何があったのかが明かされる。ややご都合主義的なところもあるが、女の子が大人になろうとする物語としても読める迫力は魅力。

りす女房

 

りす女房

りす女房

 

 昔話のような趣のある作品。いじわるな兄のもとでぶた飼いの仕事をしていたジャックは、ある日緑の服をきた小さな男が倒木の下敷きになっているのを助けてやった。男は妖精で、お礼に金の輪をくれ、生まれたてのメスの子リスの前足にはめるようにという、ジャックがそのとおりにすると、しばらくして金の腕輪をした野生動物のように絶えず辺りを警戒しているかわいい娘があらわれ、りす女房となる。ジャックは兄さんと別れ、半分だけブタをもらって幸せにくらすが、女房の不思議な様子が村人の不信を招く。うわさをきいた兄がジャックを探し当て、ブタ泥棒として彼を捕まえた。だが、りす女房はりすの姿になって塔に閉じ込められたジャックを救いにやってくる。そしてりす女房は本当の人間の女となり、二人は幸せにくらし、兄は罰を受けるという物語。素直に読めて満足だが、女房にりすの性格のまま生きて欲しかった気もする。

リサと柱時計の魔法

 

リサと柱時計の魔法 (文研じゅべにーる)

リサと柱時計の魔法 (文研じゅべにーる)

 

 孤児のリサが、春休みの1週間にひきとられたのはコウツワース夫人の家。さまざまな委員を務め、目まぐるしく動きまわるコウツワース夫人に、リサは緊張してしまいますが、その家のおばあさんの優しさに救われる思いがした。リサは、密かにおばあさんがリサに人形を作ってくれることを願うが、そのようすがなくて心配・・・。リサの出現によって、コウツワース夫人と夫の生活が変わる物語はこのまま予定調和に向かって進むかと思っていたところ、ちょっと意外なラストとなる。原作は1959年だが、古さを感じない。

ああ神さま、わたしノスリだったらよかった

 

ああ神さま、わたしノスリだったらよかった

ああ神さま、わたしノスリだったらよかった

 

 わたつみの過酷な労働の中で、自由に空を舞うノスリや、涼むヘビをうらやましがる黒人少女が主人公。厳しい労働の後で、苦労の末、最後、ごほうびでもらうキャンディーがうれしそう。

イチからつくるワタの糸と布

 

ワタの糸と布 (イチからつくるシリーズ)

ワタの糸と布 (イチからつくるシリーズ)

 

 1973年生まれの著者は、20代でイチからの布づくり(ワタを育て、糸につむぎ、草木で染め、布に織る)に出会った。
身近な道具で、その過程を体験できる方法を解説しながら、綿花と奴隷制の歴史や、ガンディーが糸つむぎを非暴力・不服従の象徴として独立運動をすすめたこと、現在も続く不平等な労働賃金に支えられる安価な衣服の大量生産・大量消費まで記述する。

ワタの栽培については端的に説明し、ワタの毛を糸、布にする工程の方を豊富な写真とイラストで詳しく解説するが、私のように手仕事に慣れていない者にとっては、これだけの道具をそろえて時間をかけて・・・と思うとハードルが高いなと思ったら。あとがきにちゃんと、ひとりでやらなくていい、布づくり仲間をつくりましょうと書いてありました。

ワタを通して、自立した生活と共生社会を考えさせ、高校の家庭科で扱うくらいの深い内容は、大人もぜひ知っておきたいところです。