児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ワタの絵本(そだててあそぼう)

 

ワタの絵本 (そだててあそぼう)

ワタの絵本 (そだててあそぼう)

 
 

 

 

子どもも身近なジーンズが、ワタを原料とした木綿から作られるという導入から、ワタ毛の特徴、品種、栽培方法、ワタ毛を糸そして布にするための古来の方法、日本におけるワタ栽培と木綿製品の歴史までを解説する。身近に手に入るもので出来る糸つむぎ、染め、織りも紹介。巻末の詳しい解説では、産業革命を支えた奴隷制度の暗い歴史にも触れる。
ワタは、8世紀末に、インドシナ半島から愛知県西尾市に流れ着いた青年によって日本に伝わったとされているそうで、西尾市に住む知人が、棉祖(めんそ)神社(正式名称は、天竹神社)というのがあると教えてくれました。

ところで、西尾市とは別の知人からワタの種をもらったので、プランターで育て始めました。栽培方法について本書では、畑の場合と鉢植えの場合が別のページに説明されているため、ページを行ったり来たりして少々迷います。

種のまきどきは5月上旬から下旬ごろで、梅雨入り直前は避けた方がよいらしく、入梅が遅くなるよう祈りながら5月20日に種をまきました。今のところ順調に本葉が出て育っています。秋に無事に収穫できたら、本書で紹介されている木綿のしおり作りに挑戦したいと思っています。

珍獣ドクターのドタバタ診察日記

 

 どんな動物でも観るという姿勢で獣医をしている著者が、自分の生い立ちや修業時代を含めて動物の命と向きあうとはどういうことかを記した本。自分が動物が好きで好きでいろいろと飼ったことや、飼育で死なせてしまった後悔、獣医学科に入学した時に、獣医学とは、人間が動物を家畜として利用することを目的としていることを知ったショック、開業後の飼い主との信頼関係の作り方など率直に書かれていて、とてもわかりやすかった。中でも、動物の命を助けるということが、ただ助ければよいのか? いくら助けても最後は死んでしまうということをきちんと受け入れるべきだと語る姿勢など、とても重要だと感じた。動物好きの子どもにはぜひ進めたい。

ペットショップはぼくにおまかせ

 

ペットショップはぼくにおまかせ

ペットショップはぼくにおまかせ

 

 ティミーの住んでいるマンションの一回にはペットランドがあります。ある日、金魚のエサを買いに行くと誰もいません。でも、オウムとカメが話しかけてきて、店主がいない間代わりに店番をして欲しいと頼んできました。オウムやカメが直接話しかけるわけにいかないので、どうしていいか教えるので、人間への応対をして欲しいというのです。ヒキガエルやねずみなど、次々持ち込まれる動物のトラブルをティミーが2匹の力を借りながら解決していく物語。楽しいナンセンスストーリーとして作られているのだから、と思いつつ、どう見ても(イラストや設定で)海亀とはみえない亀のコリーナが南の海の底で卵から生まれた、という設定(仮に海亀でも、海底に卵は産まない!!)にひっかかってしまいました。カラスが声がきれいになりすぎて悩む、というような設定はナンセンスなので抵抗がないのですが、個人的に亀に思い入れがあるせいか・・・、なかなかむずかしいですね。

トミーとティリーとダブスおばあさん

 

トミーとティリーとタブスおばあさん

トミーとティリーとタブスおばあさん

 

やや長いが、昔話のような趣があるので、読んであげれば5歳くらいから楽しめそう。ドリトル先生の作者らしく、動物と人間が同等な関係を築いている。100歳を超えたダブス夫人と、犬のピーター・パンク、アヒルのポリー・ポンク、ブタのパトリック・ピンクは仲良く暮らしていましたが、夫人のボロ屋は嵐で飛ばされてしまいます。三匹の動物は、なんとかおばあさんを守ろうと、眠れそうな場所をさがし、壊れた家から食べ物を掘りだします。かつて夫人が子どもを助けてあげたツバメの女王の助けを借りて、鳥の巣のような小枝の家をつくりますが、またしても嵐で壊されてしまいました。でも次は水ネズミの力を借り、壊れた家の地下室を掘りだして、今度こそしっかりした家に作り直しました。ピンクがうまく誘って連れてきた子どもたちも手伝ってくれて、すてきな家の出来上がりです。くいしんぼうだけどアイディアあふれるピンク。やかましやだけど絶えず夫人に気をくばるポリー、二匹の間をうまく取り持つピーターの3匹のキャラクターもいいのですが、タイトルの「トミー」と「ティリー」はそれぞれ、水ネズミとツバメの女王の名前ですが、一回目読み終わった後、これは誰だ? と思って読み直してやっとそれと気付きました。内容からみると「ダブスおばあさん」だけでも良かったかも(原題には入っているのですが)。

 

 

コヨーテ七人の巨人とたたかう アメリカインディアンのおはなし

 

コヨーテ七人の巨人とたたかう アメリカインディアンのおはなし

コヨーテ七人の巨人とたたかう アメリカインディアンのおはなし

 

 「この世のはじまり」で亀が水の底から持ってきた土のかけらが大地となり、動物たちが人間を作り、耕作を教えたという物語は、動物と人間が同等に暮らすアメリカインディアンの世界観を反映していて面白かった。こういう昔話を聞いて育ったら、自然をむやみに壊さないのではないか?「コヨーテ、うたをうたう」は『おはなしのろうそく 23』に収録された「コヨーテとセミ」の類話で「コヨーテ、火をぬすむ」は、『天の火をぬすんだうさぎ』の類話だが、あまり他では読んだことがないおはなしがメイン。動物の起源譚となっている「だいきゅうぎたいかい」など全8話。ちょっとまぬけなところもあるが、どことなくにくめないコヨーテのキャラに親しみをもて、楽しく読める。

リンゴ園のある土地

 

りんご園のある土地 (岩波少年少女の本)

りんご園のある土地 (岩波少年少女の本)

 

 スーザンは14歳。妹のローズマリーと一緒の部屋を使わなければいけないのが嫌になる年ごろだ。そんな時、偶然屋根裏で見つけた地図のりんご園のある土地を自分のものにしようとした。だが、鉄道が、その土地は鉄道の所有だと主張する。スーザンは弁護士フェリマンさんに相談しながら土地の所有権について調べ始める。
「りんご園のある土地」にまつわる思い出が次々に語られるところが魅力。フェリマンさんが、スーザンに対してきちんと弁護士としてアドバイスしていくところなどは、ちょっと日本では考えられないような設定ですが、推理小説的なスリルもあり面白い。

友だちになれたら、きっと イスラエルとパレスチナの少女の文通

 

友だちになれたら、きっと。―イスラエルとパレスチナの少女の文通 (この地球を生きる子どもたち)

友だちになれたら、きっと。―イスラエルとパレスチナの少女の文通 (この地球を生きる子どもたち)

  • 作者: ガリト・フィンク,メルヴェト・アクラム・シャーバーン,リツァ・ブダリカ,いぶき けい
  • 出版社/メーカー: 鈴木出版
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
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 ギリシア生まれのベルギー人女性リツァが仲介することで、1988年イスラエル人のガリトと、パレスチナ人のメルヴェトという二人の女の子が文通を通じて友だちとなった。住んでいるのはわずか15キロほど隔てたところだが、まるで別世界で互いの家に行くのは不可能。だが、二人はごく当たり前の女の子として、家族のことや、自分が好きなこと、将来の夢などを語る。だが、ガリトはテロの恐怖の中で、自分は大きくなったら兵士になると言い、メルヴェトも難民キャンプへの弾圧、外出禁止、親類の不当逮捕などで石を投げずにはいられないと語る。互いのことは悪いと思わないと言いつつ、二人の対立は徐々に深まり、1991年に一度だけ14歳と15歳の二人は中間地点でひっそり会うことができたが別々の道に分かれていった。その後、1997~98年にかけて、リツァはそれぞれと再会する。結婚し、離婚してシングルマザーとなったガリト。メルヴェトも結婚をして2児の母になっていた。ガリトの方がよりニヒルになり、つまらない土地ならパレスチナ人に渡してやってもいい、という物言いをするなどちょっと傲慢になってきた気がする。メルヴェトは幸せな結婚生活で落ち着いているためもあってか、まだガリトに優しい思いを抱いているように見える。同じ人間同士なのに、憎しみが育っていくさまが良くわかる。現在、トランプがエルサレムに大使館を移転したことでもめているが、この解決はいったいいつになるのだろう? イスラエルで、許可を得て出入りするアラブ人に白い印をつけさせようとしたとき、それはユダヤ人がダビデの星を強制されたのと同じになると反対意見が出たそうだが、迫害経験のあるユダヤ人だからこそ、いきなり追いだされる辛さはよくわかると思うのに。戦争して得なことなんかないのに、そうはいかないというのが恐ろしい。